中国にも桜はあるが、日本のように花見をイベントとして楽しむ文化はない。そこで、その文化を一度味わおうと花見の季節に日本に来る中国人が、ここ数年急増している。
大阪の桜の名所・造幣局の通り抜け(大阪市北区)にも中国人が大挙して押し寄せた。ここでは、560mの敷地内の道路が毎年一週間、一般開放される。南門から北門へ一方通行でゆっくりと歩きながら桜を楽しむのだが、記者が訪れたその場は、およそ花見には似つかわしくない殺伐としたムードだった。「早ぅ進まんかい、お前らええかげんにせえよ!」 「桜は触ったらあかんのや」
年配の男性から怒号が発せられるが、その声の先にいる中国人観光客の一団はまったくの無視。日本語がわからないのか、わからないフリをしているのか、彼らはどんなに怒鳴られても文句を言われても全く動じなかった。
本来ここでは、写真撮影はOKだが、他の見物客に配慮して、立ち止まって撮影してもせいぜい1、2カットに留めるのがマナーだ。しかし、桜の木の下に長時間留まり場所を占拠している10人ほどのグループがあちこちにいた。彼らの話している言語で中国人だとわかる。桜の枝の先を顔の近くまで無理矢理引っ張り、カメラやスマホで撮影している。
「彼らは強引に枝を顔の所まで引っ張るので、枝が折れるケースもあるようです。また、あそこは飲食禁止なのに、持ち込んだ菓子を出して食べている者もいます」(在阪のテレビ局関係者)
グループの皆が交代で撮影するため時間もかかるし場所も占拠されたまま。中には立ち入り禁止の柵の中にも入っていく者もいた。つまり、中国人観光客によって、「通り抜け」を通り抜けることが全く出来なくなっていたのだ。
※SAPIO2015年6月号