魑魅魍魎が跋扈する芸能界でも、ここまで法廷闘争がドロ沼化する例は珍しい。
2013年、土屋アンナが主演予定の舞台を突如降板したことで演出家の甲斐智陽(ともあき)氏が約3000万円の損害賠償を求めて提訴。未だに訴訟が続くなか、今度は土屋が甲斐氏を訴えた。
問題となったのは甲斐氏が作詞作曲した『ANNA』という曲。昨夏にYouTubeで公開され、「実在の人物とは無関係です」としながらも〈クサレヤンキー女〉〈厚化粧でその顔のしわを隠して〉〈男あさりのevery night〉などの歌詞が土屋を指すものと見られている。
曲は数日で削除されたが、土屋側は名誉毀損にあたるとして1000万円の損害賠償を求めて昨年末に提訴したのである。
甲斐氏は本誌取材に、「これは彼女のことを歌ったものじゃない」という一方で、「でも、怒るってことはこの歌詞が図星だからなのかな。彼女もアーティストなんだから、歌でやり返してほしいね」と語った。
土屋は女優業以外にも、全国のクラブを回ってライブを行なうなど歌手活動に力を入れている。5月1日には、東京・渋谷の人気クラブに特別ゲストとして出演。甲斐氏への反撃ソングは飛び出したのか。
当日は、土屋のライブを知らずに来た客も少なくなかった。昨年は2枚のアルバムを出しているが、共にオリコンの最高位は170位と279位と振るわず。歌手としてはアウェイといえる場所だった。
深夜1時30分、土屋はピンクのブラジャーが丸見えになるほど胸元が開いたタンクトップ、ショートパンツに膝まである黒のハイカットブーツという“ロック”な出で立ちで登場した。
サングラスを外すと、おもむろに「ゴー! ゴー!」と拳を突き上げ叫び始めた。その姿に最初は呆気にとられていた客も、全編英語の曲を熱唱しながら頭を上下に激しく振り乱し、「ブチかましていきまっしょい!」などと叫ぶ土屋に煽られ、大盛り上がり。「一曲も知らなかったけど楽しかった!」という客の声の通り、なかなか迫力あるステージだった。
約20分間で持ち歌4曲を熱唱した彼女は、甲斐氏との騒動には一切触れず。決着はあくまで法廷で、ということか。
※週刊ポスト2015年5月22日号