中国北京市政府は今月6日、市内全域で露天の焼き肉販売を禁止する通達を出した。中国ではウイグル族など少数民族の名物料理であるシシカバブの販売も禁止となる。この理由として、市当局は「PM2.5(微小粒子状物質)の原因となっているため」と説明している。
しかし、露天での飲食業による大気汚染は全体の5~10%となっており、ネット上では「PM2.5の主要な原因は劣悪なガソリンによる自動車の排気ガスだ。露天商を取り締まるのは弱いものイジメだ」との声が上がっている。
北京市当局は「これから夏にかけて、大気汚染がひどくなる時期であり、PM2.5対策のために、露天の焼き肉販売を禁止する」と発表し、市内中心部の33の焼き肉の露天商のほか、クレープなど他の66の露天商の営業許可を取り消した。今後は市郊外の露天商にも取締りを拡大していく予定だ。
これに、抵触した場合、200元(約4000円)から、最大で2万元(約40万円)の罰金が科せられる。
中国環境保護省によると、市内のPM2.5の主要原因は石炭を燃料とする工場からの煤煙と、自動車の排気ガス。煤煙が全体の40%で、自動車の排ガスは25%を占めている。これに対して、露天商の出す煙は全体の5~10%となっている。
製鉄などの中国のほとんどの工場では、煤煙が多く出る中国産の安価な石炭を使用しているほか、一般市民も冬場の暖房に、これらの石炭を加工した練炭を燃料としているため、煤煙がひどい。
さらに、中国で売られているガソリンも、欧米の基準の5~10倍の有害物質を出すことが知られており、中国製ガソリンの基準の厳格化が叫ばれている。
しかし、ガソリンは中国石油天然ガスグループなど大手国有企業3社が独占している状態で、基準を厳しくすれば、新たな石油精製設備を導入しなければならない。その場合、「膨大なコスト増となり、企業の利益がなくなる」との予測も出ており、政府も二の足を踏んでいる状態だ。
このようななかでの焼き肉販売の露天商の取締りについて、ネット上では「典型的な弱いものイジメ。国有石油会社を優遇しないで、劣悪ガソリンを取り締まる法が先だ」との意見が多く書き込まれている。