NHK大河ドラマ『花燃ゆ』は5月10日放送の第19話が視聴率11.1%と超低空飛行が続く。そんな中で異変が起きた。
『花燃ゆ』には原作がなく、大島里美氏、宮村優子氏の2人が脚本を書いていた。公式ガイド本での2人の対談でも「どうやら大河史上初の脚本家2人体制ということなのですが」(大島)といった言及があり、女性2人が1話ずつ交互に書くことが売りのひとつだった。
ところが、5月3日放送の第18話の脚本クレジットには「金子ありさ」とあった。3人目の脚本家が投入されていたのだ(第19話のクレジットは大島氏)。
NHKに3人になった理由を聞くと「当初から複数脚本家体制で制作しております」(広報部)と書面で回答し、それ以上の説明は聞けなかった。
2013年9月にはNHKのチーフ・プロデューサーと大島、宮村両氏が舞台となる山口県萩市を訪れ、主人公・題材探しをしている。「当初から」金子氏が加わる予定ではなかったように見える。NHK関係者が語る。
「脚本作りが難航して人数を増やしたのではないか。『花燃ゆ』は制作発表が例年に比べて大幅に遅れ、急ピッチで作業が進められた。そうした中で低視聴率を続け、現場の志気が下がっても不思議でない。
作品からも苦労が読み取れる。原作も時間もない中で時代劇に慣れない脚本家たちが作るから、人物のキャラがブレる。子役が演じた第1話の主人公・文は論語を諳んじる才女だったのが、第2話で井上真央が登場するとおにぎりばかり作っている普通の娘になってしまった」
3人目の金子氏は映画『電車男』などを手がけてきたヒットメーカーだが、時代劇は未知数だ。
「金子氏が書いた第18話『龍馬!登場』では吉田松陰(伊勢谷友介)の死後2年間、文の夫である久坂玄瑞(東出昌大)がずっと萩にいたことになっています。
しかし、史実では久坂はそのうち1年半を江戸で過ごしている。江戸にいた時の縁で坂本龍馬(伊原剛志)が萩を訪ねてくるので、ドラマでは辻褄が合わなくなり、文と龍馬の会話もかみ合わない」(地元郷土史家)
『花燃ゆ』は安倍晋三・首相の地元が舞台となるようにNHKが無理して題材を探した結果、制作発表が遅れたといわれる。無理を重ねたツケを回されたスタッフには同情申し上げたい。
※週刊ポスト2015年5月29日号