「思いやり予算」と称して在日米軍の経費を支払い、実質的な不平等条約である日米地位協定を受け入れ、米軍に都合のいい在日米海兵隊再編費用も日本持ち。自立した国防を目指すといいながら安倍政権の安保政策の本質は、そうした対米ポチ外交をさらに推し進めるものといわざるを得ない。
その象徴が、新型輸送機オスプレイの購入決定である。安倍訪米直後の5月5日、米政府は日本に対してオスプレイ17機を約3600億円で売却する方針を決めた。今後、米議会で承認される見通しだ。
1機およそ200億円。防衛省の見込みでは約100億円とされていたから、諸経費込みとはいえ2倍にハネ上がったことになる(米軍は1機86億円程度で調達している)。首脳会談直後のタイミングだけに、日米協調アピールのためのオバマ氏との“握手代”だったと見られても仕方ない。
しかも、このオスプレイは日本の自衛隊にとっては無用の長物どころか、重い足かせになりかねない。
オスプレイ批判の多くは開発段階などでの事故を理由に、安全性に疑問があるというものだ。だが、機体の事故率は米海兵隊が運用するほかの機体に比べて低い。そもそも欠陥機であれば米軍が採用することはないので、その批判は的を射ていない。
最大の問題は、自衛隊には使い途がないことだ。防衛省は尖閣諸島をめぐる中国との緊張の高まりを背景として、離島奪還のための部隊創設を計画。オスプレイ配備はその一環だとしている。菅官房長官も5月8日の会見で「離島防衛の観点から極めて有用だ」と語った。だが、それらの説明は軍事的に大間違いだと軍事ジャーナリストの清谷信一氏は指摘する。
「オスプレイはヘリより速度が速く、航続距離が長いのがメリットですが、欠点もあります。ヘリほど機動力がないので、着陸のため高度を落とすのに時間がかかり、敵の対空砲火を回避することが困難です。
また、ヘリのようにドアガン(ヘリの扉付近に装備される機関銃などのこと)やミサイル、ロケット弾などを搭載して地上を制圧できません。速度が速く、航続距離が長いこともあだになり、攻撃ヘリが随伴することもできないのです。
したがって、尖閣諸島など島嶼防衛で展開されるヘリを用いた作戦にオスプレイは向かず、通常のヘリよりも損害を出すことが予想されます」
※週刊ポスト2015年5月29日号