世界動物園水族館協会(WAZA)が4月21日付で日本動物園水族館協会(JAZA)の会員資格を停止していたことが明らかになった。
WAZAは和歌山県太地町(たいじちょう)のイルカの追い込み漁が残酷な動物虐待であると決めつけて同団体の倫理規定に反しているとし、そこで捕獲されたイルカを日本の水族館が購入していることを問題視した。
追い込み漁は必要以上にイルカを傷つけることなく捕獲できる方法で、国や県から許可されている正当な漁業だ。水族館に売却されることに何ら問題はない。しかも、あまり知られていないが太地町のイルカは世界中に輸出されている。JAZA事務局はこう説明する。
「日本はイルカを傷つけることなく捕獲する技術に優れている。イルカを捕れないアジアの国々を中心に、水族館用としてイルカの輸出が行なわれている」
財務省貿易統計によると、生体の鯨類(くじら目および海牛目)は年間50~70頭ほどが輸出されている。日本のイルカ漁の状況から、そのすべてが太地町からの輸出数と見ていい。
相手国で最も頭数が多いのは、急速な経済発展で水族館建設がブームになっている中国で、毎年30~50頭。韓国にも2014年に12頭、2013年にはロシアへ15頭、ウクライナへ20頭を輸出。過去10年を見るとアメリカ、台湾、ベトナム、タイ、イラン、トルコ、サウジアラビア、UAEなどにも輸出実績がある。
コストをかけて生体輸入するのだから食用にするとは考えられず、多くは水族館用に使われていると見られる。過去にイルカの輸出に関わった仲介業者がいう。
「太地では輸出までの期間にストレスなく生け簀で飼育できる。検疫体制もしっかりしているので、病気を持った個体を買わされる心配もなく、国際市場では太地のイルカは人気がある。
ウクライナやロシアに輸出されたイルカはヨーロッパの水族館に転売されたケースもあると聞いている。5年ほど前には北朝鮮当局から“金正日総書記の誕生日にイルカがほしい”と連絡があり、中国の水族館を経由して太地のイルカが渡ったとの情報もある」
WAZAが太地町のイルカを問題視するのであれば、世界の水族館で太地町のイルカを海に帰すべきだ。それらの国々は今もWAZAにとどまり日本を非難している。恩を仇で返すとはこのことだ。
※週刊ポスト2015年5月29日号