日本動脈硬化学会は5月1日、〈コレステロール摂取量に関する声明〉を発表。
同学会はこれまで食事療法として、コレステロール摂取を「1日200ミリグラム」に制限することを掲げてきた。本誌は米国の最新研究などで「摂取を制限しても血液中のコレステロール値には関係ない」と結論づけられていることを指摘してきた(3月13日号など)。
新しい声明では厚労省の「食事摂取基準」が、健常者に摂取制限は必要ないとしていることを紹介し、学会も〈この記載に賛同している〉とした。ようやく本誌指摘を学会も認めたことは朗報だ。メディアでは「食事で体内のコレステロール値は変わらない」と学会が大きく方針転換したように報じられた。
しかし、声明をよく読むと、認めたのはあくまで「健常者について」と条件がつく。学会はこう答える。
「この声明は、LDLコレステロール値が正常の人は必ずしも摂取を厳重に制限する必要はないが、高値の人にはそれが当てはまらないので誤解しないよう注意喚起するものです」
これでは間違いを反省して方針転換したとはいえない。声明では本誌が挙げてきた米国の最新研究などに触れているが、「それでも方針転換はしない」と強弁するつもりのようだ。
紛らわしい声明を受けて慌ただしいのは食品業界だ。「コレステロールゼロ」を謳う商品を販売する企業にとっては、“常識”が覆るかの瀬戸際である。「ゼロ」のサラダ油などを販売する日清オイリオは、「健康意識の高まりから商品を提供してきたが、摂取しても問題ないことが定説になれば、表示から外すことを検討する」と気が気でない。
そして何より国民の健康が最も大事な問題であることはいうまでもない。
※週刊ポスト2015年6月5日号