中国の長江(揚子江)で6月1日、乗客ら458人を乗せた旅客船「東方之星」(2200トン)が転覆した事故では生存者が14人しかおらず、400人以上が絶望的な状態だ。
このような惨事を生んだのは同船が何度も改造されたほか、船が転覆の危機にあるにもかかわらず、船長らがわれ先に逃げて、船内での警報もださなかったことが原因であり、事故は「人災」との指摘が出ている。中国の財新メディア(電子版)が報じた。
同船は1994年に建造され、今年で20年以上使用されているが、船の寿命は通常30年なので、特に問題はない。
同メディアが「大きな問題」として指摘しているのは、同船が何度も改造を重ねている点だ。同船は重慶長航東風船舶工業公司傘下の東風船敞が設計し建造したが、建造時と比べると、客室部分が2層ほど加えられており、最上階は水面から10mも高く、水面下部分は約3mしかない。通常ならば、客室の高さは6mほどなので、4mも高くなっている。その分、船が不安定になりやすく、強風が吹けば、バランスを崩して倒れやすくなる。
事故当時、現場付近は激しい風雨に見舞われる悪天候で、東方之星は竜巻に巻き込まれて1~2分程度で転覆したとされるが、このような短時間で転覆した原因は船の上部の客室部分が高かったことが大きな原因とみられる。
竜巻が発生したのは転覆する5分前で、船長や機関長は事態を把握していたとみられるが、何の警報も出さなかったのは怠慢以外の何物でもない。
同メディアによると、船長や機関長は全体が見晴らせる最上部の操縦室などにいるはずで、通常ならば、この部分は最も脱出が難しい場所だ。それにもかかわらず、船長と機関長の2人が脱出できたのは、竜巻によって船が転覆することを予測し、我先に逃げたためと推測される。
事故が起きたのは午後9時半ごろで、旅客は就寝準備中だったとみられるだけに、警報が出されていれば、もっと多くの旅客が助かった可能性もある。