中国政府は四川省やチベット自治区のチベット族に対して、5月20日から7月15日まで香港やマカオを含む国外への旅行を禁止する緊急通達を出していたことが分かった。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「博訊(ボシュン)」が報じた。
その理由について、通達はまったく触れていないが、7月6日がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の80歳の誕生日という節目に当たることから、チベット族の市民が国外旅行を名目にして、大挙してダライ・ラマが住むインド北西部のダラムサラに駆けつけ、誕生日を祝うことを警戒しているとみられる。
緊急通達は5月22日に中国国際旅行社に届けられており、その内容は次のようになっている。
「緊急通達:これから7月15日まで四川省の甘孜(かんぜ)自治州などのチベット族の居住区の住民は全て例外なく、香港やマカオを含む海外への旅行を禁止する。すでに、出国ビザなどを発行してもらっているチベット族の市民については、速やかに届け出なければならない。そのうえで、7月15日までの旅行は禁止する手続をとらなければならない。ただし、それ以降の旅行については許可してもよい。
このような市民がいれば届け出るようにしなければならず、旅行社の判断で、旅行を許可することは絶対禁止する。併せて、海外旅行について届け出ている市民のパスポートや身分証もコピーして提出しなければならない」
これについて、北京の外交筋はこう指摘する。
「中国では80歳の誕生日は日本同様、『傘寿』と呼ばれているが、同時に『大寿』とも書くほど、『特別な記念日』とされている。チベット仏教でも盛大に祝う習慣があることから、中国当局が警戒しているのは間違いない」
とりわけ、習近平政権になってから、少数民族政策は厳しさを増していることから、中国はダライ・ラマの傘寿の祝賀行事を機に、多数のチベット族市民がダライ・ラマのいるインドに亡命することを警戒しているといわれ、今回の緊急通達につながったとみられる。