「ガンプラ」(ガンダムのプラモデル)で知られるバンダイと、1980年代に一世を風靡したゲーム「パックマン」などで知られるナムコが2005年に経営統合して生まれた、バンダイナムコホールディングス。
社長の石川祝男氏は、ナムコ時代に大ヒットアーケードゲーム「ワニワニパニック」を生み出した名開発者だ。ノンフィクション作家の杉山隆男氏が、企画をヒットさせる秘訣を石川氏に聞いた。
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大ヒットゲーム「ワニワニパニック」の開発にあたり、石川氏がはじめに掲げたコンセプトは、「一世を風靡した『モグラたたき』を超えるもの」だった。
すぐ企画書にまとめて上司に提出するも却下。だが、「イケるという確信がありました」と語る石川氏は諦めない。
その日の午後には、ワニの形をしたスリッパを買ってきて、段ボールでワニが出てくる穴をつくり、部長の前でBGMを歌いながら、自ら「ワニワニパニック」になりきってみせたという。
「大ヒットは、いいねという人が1人か2人くらいのものの中から生まれる」と話す石川氏は、他社がヒットさせて、のちの「音ゲーブーム」をつくり出したダンスゲームを引き合いに出した。
(以下、一問一答)
石川:あれ、実はナムコの企画の中に似たようなものがあったんですが、却下されてるんですよ。企画が出たとき、10人中7人は、人が見ている前で踊るゲームが流行るわけない、場所もとるし、恥ずかしがるから誰もやらないって。もう既成概念以外の何ものでもないですよね。
──逃がした魚は大きかった。
石川:それはあります。言い訳するわけじゃないけど、ボツにしたのはたまたま私のチームじゃなくて。でも、あのときやっておけばよかったなってのはあります。
〈ゲームの企画は、多数決で決めていいものと、そうではないものの2つがあると石川氏はいう。問題は、少数意見の中から何を拾うかという見極めだという〉
石川:結局は、企画者の思い入れの強さです。簡単に諦めるようでは大したことないんでしょうから。
大ヒットした「太鼓の達人」なんか、まだ新入社員くらいの若手が企画を出したけど、音ゲーは他にいっぱいあるのに、同じようなもの出しても駄目じゃないかって却下されたんです。
でも諦めきれず、仲間とこっそり試作機まで作って、当時常務だった私のところに、「ぜひやってください」って直訴に来たんです。そういうのを拾って、チャンスを与えることが大事だと、あれからずっと思ってます。
──ゲームメーカーにとって一番大切なのは人間だと。
石川:音楽でも映像でも、われわれエンターテインメント企業は、最初は一人のアイディアだったり発想や思いで、それに賛同する人が増えて強いエネルギーになって、最終的には製品化されるわけです。やっぱり一人の思い、個の力の集合体なんです。
※週刊ポスト2015年6月19日号