中国の習近平国家主席は暗殺を極端に恐れているといわれている。実際にこれまで何度か暗殺未遂もあった。中国共産党の内部事情に精通する産経新聞中国総局特派員、矢板明夫氏がレポートする。
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香港メディアなどによれば、習近平はこれまで少なくとも6回、命が狙われたことがあったという。時間や場所、手口などの詳細が分かっているのは3回だ。
共産党総書記に就任する直前の2012年夏、会議室に爆弾を仕掛けられたのが最初で、その直後に、健康診断のために訪れた軍直属の病院で検査用の注射器に毒を入れられていた。
3回目は2013年夏、地方視察の際に乗る自動車が交通事故を起こすようにタイヤが細工された。いずれも事前検査で判明し、未然に防ぐことができたという。
2014年4月30日にウルムチ南駅で起きた爆発事件も習近平暗殺が目的の可能性が高いといわれる。同月27日から新疆ウイグル自治区の視察に出かけていた習近平はこの日にウルムチから北京に戻る予定だった。夕方、ウルムチのターミナル駅で突然、爆弾が炸裂し、3人が即死したほか、70人以上が負傷した。
中国当局はイスラム過激派のウイグル人による無差別テロと発表したが、しかし、外国メディアが撮影した現場写真には銃撃戦を思わせる銃弾跡が多くあり、手口はこれまでのウイグル人が起こした暴力事件と大きく違っていた。
治安当局の厳しい管理下にあるウイグル人たちは、それまで中国当局に抗議するために、ガソリンを積んだ自動車を建物に突っ込んだり、ナイフで通行人を切りつけたりするなどの事件を多く起こしたが、威力の高い爆弾や銃器を使った事はまずなかった。
また、武器を厳重警備された駅に持ち込むことも不可能に近い。そのため、爆発事件は治安当局に内通した党内の不満分子が仕掛けた習近平暗殺未遂ではないかといわれている。
習近平だけではなく、指導部内で反腐敗を担当する王岐山・規律検査委員会書記も刺客に襲われたこともあった。今年3月、河南省を視察したとき、元警察官の2人組に狙われ、暗殺に失敗した後、2人が自ら拳銃で頭を撃ち抜いて自殺したとの情報がある。
※SAPIO2015年7月号