焙煎所を併設したカフェ、厳選された豆をハンドドリップで丁寧に淹れるスタイルで、コーヒー好きを魅了しているのが「コーヒー界のアップル」と称されるブルーボトルコーヒーだ。
オープンから4か月経った今も行列が絶えない、日本1号店が進出した清澄白河(江東区にあり、地下鉄・清澄白河駅を中心とした一帯)は、松尾芭蕉ゆかりの 地としても知られる江戸情緒溢れる東京の下町。銀座から電車で20分弱、自然豊かな清澄庭園や寺院が並び、のんびりとした下町風情が街の魅力だ。その一方 で、東京都現代美術館やアーティストの作品が集うギャラリーなどが並ぶ、“アートの街”としての一面も持つ。
これまであまり目立つ街ではなかった・そんな清澄白河への出店について、個人による国内最大級のカフェサイト『東京カフェマニア』主宰で、喫茶店関連の著書も多い川口葉子さんはこう語る。
「ブルーボトルの公式見解としては、本社があるアメリカ・オークランドの環境に清澄白河の街が少し似ているから、ということだそうです。清澄白河は高層ビルが建ち並ぶ都会ではなく、空がよく見える、のんびりしたどこか懐かしい環境です。
そうした雰囲気を求めていたのでしょう。また、都心に比べて賃料が安いことも、理由として考えられます。焙煎には広いスペースが必要なので、その場所を確保しやすかったのでしょう。また、清澄白河には古くて使われなくなった倉庫などがたくさんあるので、改装してカフェやコーヒーショップにしやすかったんです」
賃料や街の雰囲気に加え、誰も知らないような街だからこその利点があるようだ。
「創始者のジェームズ・フリーマンさんは、今年3月に来日した際、冗談交じりに“都心で始めて、注目を集めて1年で撤退してしまうと格好悪いけれども、東京のゆったりとした人の少ない街でのんびりと出発すれば、万が一失敗することになっても目立たないからね”と、話していましたよ(笑い)」(川口さん)
確かに、青山や表参道ではポップコーンやパンケーキなど、新しいブームが生まれては消えていき、鳴りもの入りで進出した店が埋もれていく例が少なくない。場合によっては、“一発屋”のイメージで看板に傷がつきかねない。
「フリーマンさんは清澄白河への出店前から地元の競合店とも友好な関係を築き、“共に街を盛り上げよう”という空気を共有している。日本の喫茶文化をリスペクトする同氏だからこそ、“日本に浸透させたい”という強い思いも込めて、1号店の場所を選定したのでしょうね」(川口さん)
注目カフェは他にも築50年のアパート兼倉庫が生まれ変わった「fukadaso cafe」、今年2月には、築80年の物件を改装したカフェ、ギャラリー、ショップの複合施設「gift_lab GARAGE」がオープン。5月にはさくさくとしたブリオッシュパンに、冷たいジェラートをはさんだ、イタリア発の新感覚スイーツの店「ブリジェラ」が初上陸した。ジェラートをブリオッシュではさんだブリジェラでは、ブルーボトルコーヒーからの持ち込みもOKだ。
温かい下町の人情と、歴史ある街に、新しいカフェ文化が花開き、今や清澄白河は世界に愛される最旬スポットになった。次のお休みのお出かけ先は、ココに決まり?
※女性セブン2015年6月18日号