韓国の経済界で「中国脅威論」が公然と唱えられるようになってきた。韓国の国策シンクタンクである産業研究院は、昨年10月に、「4年後の2018年にはスマートフォン、液晶パネルなど、自動車と半導体を除くほぼすべての韓国の主力輸出品目が中国に追いつかれるか、追い越される」との厳しい見通しを発表した。
しかし4年も時間はかからなかったようだ。一部の産業では、すでに韓国は中国に完全に後れを取っている。
この1年、韓国経済の生命線といわれてきた輸出産業の失速が顕著になっている。2015年5月の輸出額は424億ドル(5兆2700億円)で、前年同月比マイナス10.9%を記録した。2桁の大幅減となったのは2009年のリーマンショック以来のことである。
韓国のシンクタンクが危惧した通り、日本総研調査部研究員の大嶋秀雄氏は、背景に中国企業による追い上げがあると指摘する。
「たとえばスマホを例に取ると、韓国製品は品質では中国製に勝てても、価格では勝てなくなっている。
しかも中国やASEANなどの新興国市場では性能よりも価格が重要で、そのニーズに韓国製品がこたえられなくなってきた。かといって韓国のメーカーにはアップルほどのブランド力もありません。
他にも液晶パネルや家電などの輸出量が大きく減っていますが、そうした製品はいずれもここ数年、中国企業による生産が開始された品目です。
つまり、中国が製造し輸出できるようになった分野では、韓国製品がどんどん不要になっている構図があります」
※週刊ポスト2015年6月26日号