韓国国内の中東呼吸器症候群(MERS)による死者は23人、感染者は165人に上り、自宅や医療機関での隔離対象者は約6700人に及んでいる(18日現在)。初動対応の不手際から感染者を多数出した挙句、隔離対象だった日本人を無断で帰国させるなど、すでにパニックは国境を越えてしまった。
「院内感染の爆発は政府や役人の腐った体質が招いた」と元時事通信ソウル特派員でジャーナリストの室谷克実氏が指摘する。
「最大の院内感染者を出したのが、巨大財閥サムスングループが経営するサムスンソウル病院です。韓国政府が病院名を公表しなかったのは財閥への配慮だったということは明らか。財閥から役人への賄賂は過去に何度も指摘されており、財閥にへりくだる政府役人という構図が透けて見えます」
国民の危機意識の低さも露呈した。中央日報など現地報道によれば、MERSの症状を訴えた40代男性は保健所の救急車を拒否してタクシーで病院へ行き、検査中に隔離されたことに腹を立てて病院を脱走。陽性反応だったために警察が男性や接触のあった人物の特定などに奔走させられた。
「隔離対象の医師ですら集会や海外旅行に出かけている。感染症に対する認識不足や公共意識の欠落の表われです。自分が迷惑をかけられると烈火のごとく怒るが、自らの過ちに寛容なのが韓国の国民性です」(前出・室谷氏)
自分本位で周囲への迷惑を顧みない人物は、韓国では「ヤムチェ(=恥知らず)族」と呼ばれて社会問題にもなっている。「韓国病」とも呼べるこの国民性と社会の病理が感染拡大を招いた一因だろう。
※週刊ポスト2015年7月3日号