資産額250億ドル(約3兆750億円)と、昨年の中国の長者番付第1位に輝いた馬雲(ジャック・マー)アリババ・グループ・ホールディングス会長は今月9日、米ニューヨークで講演を行ない、「1988年に大学卒業後、小さな地方大学で英語教師として働きながら、月に720元(約1万4760円)を稼いで、好きなように使っていたときが、私には最高の時代だった」などと語り、観衆の笑いを誘った。米CNNが報じた。
馬氏は1964年生まれ。杭州師範学院外国語学科で英語を学び、杭州電子科技大学で英語の教師をしていた。1995年に米国を訪問し、そこで初めてネットビジネスと出会い、帰国して4年後の1999年にアリババを立ち上げた。
馬氏は昨年9月、中国では電子商取引最大手である同社をニューヨーク証券取引所に上場し、巨額の資産を手に入れた。
しかし、この日の講演で、馬氏は「株式上場後、いまアリババには難しい局面で、むしろ悪くなっている」と前置きし、「もし、もう一度人生をやり直せるのならば、株式を上場せずに、個人事業をやりたいと思っている」などと企業経営に慎重な姿勢をみせた。
これについて、馬氏は「巨額の金を持っていない時は、その金をどう使うべきかを知っているが、億万長者になれば、その金は自分のものでなくなってしまう。その金は(私に対する)人々の信頼であり、私の責任となる」と述べた。
馬氏は常々「100万ドル持っていれば運が良くて幸せな人だが、1000万ドルを超えれば、多くの責任や負担が伴う」と語っている。
今回の馬氏の訪米の目的は米市場開拓で、「アリババは競争するのではなく、別の道を目指していく。すなわち、米中小企業各社が中国に進出して、製品を販売できるように支援する役割を果たすことになるだろう」と述べ、「すでに、アリババショッピングモールでは米国産チェリーを販売している」ことを例に挙げて、米国製品の中国での販売に主眼を置いていく方針を明らかにした。
また、馬氏は今後の中国の市場規模について、「中国の中間層の規模は現在、全米の人口(約3億人)並みだが、今後10年内に5億人を超えるだろう」との見通しを明らかにした。