オリンピックに向けた政府のクールジャパン戦略促進や円安効果も相まって、日本を訪れる外国人旅行者数は1300万人を超えて過去最高を記録し続けている。街中の外国人比率が高まるにつれ、改めて実感するのが日本人の「マナーの良さ」である。
特に、2014年に対前年比で8割増しとなる約241万人が来日して増え続ける中国人の言動をみると、反面教師にするどころか“民度”の違いに愕然とさせられる人も多いはずだ。
ゴミのポイ捨て、行列の横入り、電車内での大声ケータイ……。日本製品の“爆買い”でインバウンド消費を牽引する「良いお客さん」には違いないが、異国にてマナー違反を繰り返すその傍若無人ぶりはさすがに目に余る。
『中国人の取扱説明書』の著者であるジャーナリストの中田秀太郎氏は、中国人の国民性をこう分析する。
「根本的に自分とその身内さえよければという『個人主義』がはびこっているので、他人に配慮して細やかな礼儀をわきまえる日本人の美徳意識は理解できないのです。
中国でも行列に横入りする人が注意されることはありますが、『オレは急いでいるんだ!』と逆ギレする始末。だから、文句もいわずに整然と並んでいる日本人に対して『どうしてこんなに真面目なのか』と不思議に思っているほど。
数年前に日本で働いていた上海出身の男性は、電車内で化粧をしている女性を見て、『日本人は時間を守るためにここまでするのか』と驚いたそうです。日本人なら行儀の悪さを指摘するでしょうが、中国人はそれ以前に、化粧は家でして堂々と遅刻すればいいとの考え方。一事が万事この調子で、他人に迷惑をかけるといった発想がないのです」
周囲への迷惑という点では、たばこに関するマナーも同様である。
先般、中国で話題のニュースを日本向けに配信する『レコードチャイナ』が配信した記事が大きな反響を呼んでいる。北京市が職場など屋内を全面禁煙にする条例を6月に施行したことを受け、とあるネットユーザーが中国版ツイッターに、〈たばこに対して最も厳しいのは日本だ〉と書き込んだところ、多くのコメントが寄せられたという内容だ。
〈日本では街角など喫煙場所が決められていて、歩きたばこをする人はほとんどいない〉
〈多くのホテルが『たばこが吸える部屋』と『たばこが吸えない部屋』を設けている〉
中国人自らが〈日本では整然とした秩序が保たれている〉と日本の“分煙マナー”に称賛の声を挙げたことで、良識ある中国人もいることにホッとさせられる。だが、その一方で〈中国は日本ではない。比較するな〉、〈日本のルールが世界のルールか?〉などの批判も出たという。
前出の中田氏は、「中国のたばこマナーを日本並みに高めるのは相当難しい」と話し、こう続ける。
「中国では、たばこのポイ捨ては日常茶飯事で、トイレの小便器にたくさん落ちていて水が流れないなんてことはよくあります。
また、いくら禁煙の表示が掲げてあっても、イベント会場内では平気でたばこを吸う人がいますし、バスの窓から身を乗り出して吸う人もいる。レストランでは食べ終わった皿に吸い殻を捨てて帰る人までいます。こうした光景をみると、北京の条例効果はほとんど期待できないと思います」
2008年の北京オリンピック以降、中国国内のたばこ規制が進んだと指摘する向きもあるが、いくら法や条例で縛ってもマナー順守精神の高い日本人とはいまだに雲泥の差があることがうかがえる。
ホテル専門誌などが外国人観光客に日本の喫煙環境の印象を聞いた調査によれば、「街中に吸い殻が落ちていない」「日本人の喫煙マナーがよい」「歩きたばこをしている人が少ない」など、喫煙者だけでなく非喫煙者の双方から8割以上の満足度を得たとする結果も出ている。
さて、東京オリンピックを前に受動喫煙対策の強化が叫ばれている日本だが、ムダな予算を使って規制を強めるぐらいなら、世界一と称される日本人のマナー意識を一層向上させたほうが、よほどクールジャパンの再評価につながるのではないか。