安保法制を巡る議論が活発化する中、改めて自衛隊の在り方が問われている。軍事力だけではなく、人道援助や災害派遣を通じ国外でも存在感を増す自衛隊を、世界の人々はどのような目で見ているのか
自衛隊は世界各地の自然災害でも被災者のため尽力している。2004年12月26日に発生したインドネシア・スマトラ沖地震では陸・海・空の自衛隊部隊およそ1000名を派遣(2005年1~3月)した。
30度を超える猛暑にボウフラやハエが発生する過酷な環境のなか、海自の輸送艦に寝泊まりした陸自の医療チームは約2か月で6000人の地元住民を診療し、現地の子供たちに麻疹ワクチンを接種した。災害派遣で予防接種まで行うのは異例ともいえる処置だった。
インドネシアの地元住民は一様に歓迎した。ある5歳児の父親は、「日本の自衛隊がこんなところまで来て子供のために注射してくれて感謝している」と述べ、独身の自衛隊員に「娘をもらってほしい」と申し出る地元住民も少なくなかったという。離任の際は、「もっと長くいてほしい」との声が止まなかった。
2005年のパキスタン地震では航空援助隊を派遣。ヘリポートで作業していた陸自部隊の前に同国のムシャラフ大統領が突如として現れ、「日本の支援をありがとう。君たちは素晴らしい活動をしていると聞いている。大変感謝している」と国のトップが直接、現場の隊員に謝辞を述べた。その後もハイチ地震、パキスタン洪水、フィリピン台風で被災して苦しむ現地住民に自衛隊員が寄り添った。
直近の活動は今年4月に発生したネパール大地震だ。約270名の医療援助隊を派遣し、疲弊した被災者に巡回診療や防疫活動を行った。その模様を伝える日本政府のフェイスブックには、「いつも貧しい国を助けてくれてありがとう」「日本は本物の友人だ」「これが日本の素晴らしさだ」とのコメントが現地から続々と寄せられている。
※SAPIO2015年8月号