いま米国は、中国をどう見ているのだろうか。日本では「米国は二枚腰だ。米国が中国と対決一辺倒と思い込んでいると、痛い目に遭うぞ」という訳知り顔な解説がいまも根強い。
そういう立場の論者は「だから対米従属ではダメだ。日本は独自外交を」と話を続けて、安全保障関連法案についても反対している。これは一見、もっともらしい。独自外交などと言われると、なんとなくプライドをくすぐられてしまう。
たしかに米国は一時、対中関係の軟着陸を模索していた時期がある。2013年6月の米中首脳会談の後、ケリー国務長官やバイデン副大統領は中国が盛んに宣伝した「新型大国関係」という言葉を使って米中関係を説明した。
だが、いまや対中融和論はすっかり影を潜めてしまった。4月の日米首脳会談でオバマ大統領が「中国は通常の国際紛争の方法で解決するのではなく、力の拡大を図っている。この行動は間違っていると言いたい」と発言したとき、「ずいぶんはっきり言ったもんだな」と驚かされたが、実は裏付けがあったのだ。
如実に示したのが、米軍の統合参謀本部が7月1日に発表した「国家軍事戦略2015」という報告書である。やや遅ればせではあるが、東アジア情勢を眺めるうえで不可欠の文書だから、ここでチェックしておこう。
報告書は、国際秩序と米国の安全保障上の利益を脅かす国としてロシア、イラン、北朝鮮とならんで初めて中国を名指しして、こう記した。
「中国はアジア太平洋地域の緊張を高めている。南シナ海のほぼ全域に主権を求める中国の要求は国際法と合致しない。強制力を伴わない解決を求める国際社会の呼びかけに、中国はシーレーンでの軍事力配置を可能にする岩礁埋め立て作戦で応じた」
ちなみに、前回2011年の報告書がどう書いていたかといえば「わが国(米国)は積極的で協力的、包括的な対中関係を求めている。相互利益の分野を拡大し理解を深め、誤解と勘違いを防ぐために軍対軍の関係を深めていく」と協調的だった。