〈日本の怪物高校生がボルト超え〉──陸上短距離界の世界王者、ウサイン・ボルトの記録を塗り替えたとして新聞紙面を賑わせたのは、城西大城西高校2年のサニブラウン・ハキーム(16)。
7月15日から開催された陸上の世界ユース選手権で、100m、200mの2冠を達成。200mでは2003年大会のボルトの記録、20秒40を上回る20秒34の大会新記録をマークし、8月の世界選手権(中国・北京)に日本代表として追加招集される見込みだ。
ハキームは父親がガーナ人、母親が日本人のハーフ。現在、彼のようなアフリカ系ハーフが、日本のスポーツ界を席巻している。
昨年のユース五輪では、大阪薫英女学院高校2年生(当時)の高松望ムセンビ(17)が女子3000mで金メダルを獲得。彼女の父親はケニア人だ。
女子バレーボールの宮部藍梨(16)は父親がナイジェリア人。身長182cmの体格を武器に7月10日に日本代表デビューした。
同じく高校生で日本代表入りしたのは、男子バスケットボールの八村塁(17)。父親がベナン人で、身長198cmの大型センターだ。
その他にも、野球ではオリックスのドラ2ルーキー・宗佑磨(19・父はギニア人)が、ラグビーでは強豪「サントリー」に所属する日本代表・松島幸太朗(22・父はジンバブエ人)などが有名だ。
なぜ彼らは運動能力が高いのか。スポーツ遺伝子に詳しい順天堂大学准教授の福典之氏が解説する。
「運動能力に関係すると見られる遺伝子は100種類以上あり、とくにACTN3という遺伝子が強い影響を与えています。中でも、瞬発系競技に有利なのがRR型とRX型。この遺伝子を持つ割合は日本人の7~7.5割に対しアフリカ人は9~9.9割に達する」
興味深いのは、割合の高い父母を持つ子の運動能力が必ずしも高いとは限らないことだ。
「私たちの研究では、短距離で活躍する選手は、父親がアフリカ系で母親がヨーロッパ系の選手が多いという結果になった。似た遺伝子よりも、異なる遺伝子の組み合わせが、予想を超える能力を生み出すのかもしれません。その意味で、アフリカ人と日本人のハーフがずば抜けた運動能力を持つ可能性はある」(福氏)
※週刊ポスト2015年8月7日号