スマートフォンとパソコンの中間製品として市場拡大が期待されてきたタブレット(多機能携帯端末)だが、ここにきて普及速度が落ちている。
米調査会社のIDCが7月29日に発表した「世界のタブレット端末に関する市場調査」によれば、2015年4~6月の出荷台数は、前年同期比7%減の4470万台。しかも、3四半期連続で前年割れを続けているという。
その要因として、IDCは〈買い替え周期の長期化〉や〈大型スマホとの競争激化〉などを挙げているが、日本のタブレットユーザーからもこんな声が聞こえてくる。
「スマホを大きなサイズの『iPhone6 Plus(アップル)』に買い替えて以降、新聞・雑誌や電子書籍アプリ、PDAファイルの閲覧など、すべての用途がそれ1台で事足りるようになったので、数年前に購入した『iPad(同)』は一切開かなくなってしまいました」(30代会社員)
アップルにとっては自社端末どうしで市場を食い合ってしまう悩ましい事態。確かにiPhone6 Plusに限らず、5インチ以上の大画面スマホのラインアップが拡充される中、最近まで7インチクラスが主流だったタブレットとの差別化が消費者にうまく伝わらなかったことは事実だろう。
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志もいう。
「例えば、タブレットを使って社内会議をしたり、資料やカタログを見せながら営業をかけたりするような法人向けの需要はまだ一定数あると思いますが、一般ユーザーはそこまでの必要性を感じていないのでしょう。
動画が大画面で見られるといっても、タブレットサイズだからこそ活きてくるコンテンツはさほどありませんし、何より年代を問わず動画も小さなスマホ画面で見るのに慣れているという人が増えましたからね」
そのほかタブレットの利便性として、手書きやタッチペンを使った入力操作のしやすさを売りにする製品も多いが、残念ながらその機能性も消費者を納得させるまでには至っていない。
「タッチパネルが静電気を検知するシステムになったせいか、携帯ゲーム機で採用されているような感圧式に比べて細かい操作がしにくい製品が多いのが現状です。
タッチペンも専用技術を搭載していないタブレットを購入してしまうと、一番反応のいいペンを探すのに骨が折れ、『それならタブレットでなくてもいいや……』となってしまう」(前出・安蔵氏)