「アベ政治を許さない」――そう書かれたプラカードが国会前を埋め尽くす日が続いている。『安全保障関連法案に反対する学者の会』に名を連ねる東京大学名誉教授の上野千鶴子さん(67才)は7月20日に開かれた記者会見で、安全保障関連法案の強行採決に対する抗議声明を発表した。
「この法案が通れば、政権が憲法の解釈を変えたことになり、憲法が根幹から揺らいでしまう。憲法順守の立憲主義、ひいては国民主権が揺らいでしまいます。そしてこれからは世界中至る所で行われている米国の戦争に巻き込まれてしまう。
政府は自衛隊の“派遣”と言っていますが、事実上の“派兵”で命の危険が伴います。後方支援といえども前線とリスクは変わらないし、戦場から戻ってきた後も問題です。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることになるでしょう。そういう場所に国民の仲間を送るのでしょうか。法案が通れば、日本が戦後70年、戦死者を出さず戦争で人を殺さず国際社会で築き上げてきた“非戦ブランド”が台無しになってしまう」
また、上野さんは「これからは女性も戦争に行く時代になる」と指摘する。
「若い女の子が、“戦争になっても、男の子だけ行くんでしょ”と言っていました。そんなことはありません。ハイテク戦争の時代、女性だって“共同参画”する可能性は決して低くない。しかも今の自衛隊は志願制ですが、徴兵制になることも充分考えられます。女性にとって無関心ではいられないのは当然のことです。政治に対して、“言ってもしょうがない”っていう無力感を持っている人が多いと思うんです。ましてや、女性にとって“怒り”という感情は許されてこなかった。でも、今怒らなくて、いつ怒るのでしょうか。怒りのマグマを今こそ爆発させる時です」
※女性セブン2015年8月13日号