100周年を迎えた高校野球。今夏の甲子園大会は、リトルリーグ時代に通算132本塁打を放ち、『和製ベーブルース』の異名を取る1年生・清宮幸太郎(早稲田実業)、50メートルを5秒台で走るナイジェリア人ハーフのオコエ瑠偉(関東第一)、最速150キロを投げる左腕・小笠原慎之介(東海大相模)など注目選手が目白押しの大会となっている。
一方で、数多くの高校球児は聖地に足を踏み入れることなく、涙を飲んでいる。プロ野球に目を移すと、「甲子園に行けなかった」という挫折を糧に、のちに成長を遂げた選手の活躍が目立っている。
たとえば、今年オールスターに出場した全56選手のうち、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)、阿部慎之助(巨人)、黒田博樹、菊池涼介(ともに広島)など23選手は甲子園不出場組だ。特にパ・リーグは、28選手中14選手と半数が該当する。大谷翔平(日本ハム)、筒香嘉智(DeNA)、松井裕樹(楽天)などは甲子園出場歴があるものの、高校野球集大成となる3年の夏は予選敗退している。
松井は高3の県大会で敗戦後、「入学してから3年夏を目指してやってきて、負けて悔しいです」と話し、その後行なわれたIBAF 18Uワールドカップの決勝で敗れると、「(県大会を含めた)2つの大会の負けを、今後の野球人生の糧にして、勝てる投手になりたい」と決意を語っていた。負けが選手を成長させる側面は大きい。高校野球に詳しいスポーツライターはこう話す。
「投手であれば、甲子園に行けなかったことで肩を消耗しないで済んだことも大きいでしょう。しかし、それ以上に『甲子園出場組には負けない』という反骨精神が生まれる。精神的タフさを要求される抑えの投手には、甲子園不出場組が多いですね」
今年、チームの抑えを務める投手の甲子園出場組は松井の他には、平野佳寿(オリックス)、山崎康晃(DeNA)だけ。この3投手はいずれも、高3の夏は予選敗退している。平野は3季連続で甲子園出場を果たしているが、2番手投手だった。澤村拓一(巨人)や中崎翔太(広島)、増井浩俊(日本ハム)、高橋朋己(西武)などは甲子園不出場組だ。
予選で敗れ去った球児たちは、涙の数だけ強くなるのかもしれない。そう、アスファルトに咲く花のように。