プロ野球界では、「○○本安打」や「○○歳最長××記録」などが達成されると、大きく報じられる。そんな中、「200勝・2000本安打」を表彰する「名球会」を設立した400勝投手の金田正一氏が、記録偏重となった今のプロ野球界にもの申す。
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今の子たちには、記録より記憶に残る選手になってもらいたい。例えば野茂英雄だ。近鉄とメジャー、日米通算でやっと201勝だが、自己管理の行き届いた選手生活、野球に対する真摯な姿勢は素晴らしかった。
記録だけにしがみついた選手は記憶には残らない。2000本以上を打った選手、全員の名前がすぐにいえるか? 200勝以上した投手でも、村山実(阪神)、杉下茂(中日)、稲尾和久(西鉄)、鈴木啓示(近鉄)などが挙がる程度だろう。
現在では通算250セーブも名球会の入会条件に加えられているが、これも失敗だったな。あの時、大反対した長嶋(茂雄)が正しかったよ。当時は時代に応じた数字ということで認めたんだがな。佐々木主浩(横浜、マリナーズ)のように、日米で活躍して記憶に残る投手もいるが、本来は先発・完投こそが投手の勲章です。事実、名球会の基準を満たさず引退しても、記憶に残った選手はいるだろう。例えば江川卓(巨人)だ。彼は200勝してはいないが、誰もがしっかりと記憶している。
もう一度いう。記録より記憶に残る選手を目指しなさい。記録は後からついてくるんだ。ありとあらゆるスポーツが注目を浴びるようになっている時代だけに、これはプロ野球界全体が真剣に取り組まなければならない問題だと思うよ。
●かねだ・まさいち/1933年、愛知県生まれ。国鉄、巨人で活躍。球界唯一の400勝達成をはじめ、365完投、4490奪三振、5526.2投球回など、数々の日本記録を持ち、圧倒的な実力と存在感から「天皇」と呼ばれた。引退後はロッテ監督。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号