ビジネス

退職金2000万で貯蓄500万の60歳夫婦 80代半ばで破産の恐れ

 年金とともに老後の家計を支える大きな柱が「退職金」だ。厚生労働省『就労条件総合調査』によると、2012年の退職金の平均は2156万円(大卒事務職・35年以上勤務)。額は年々減っているので、どう活かすかが重要だ。

 退職金制度は会社によって異なるが、一括でもらう「一時払い」方式と、分割してもらう「年金」方式の2つがあり、どちらかを選べることが多い。厚労省の調査によれば、「一時払い」を選ぶ人が増えており、約7割にのぼる。

 その理由は税制上のメリットにある。一時払いの退職金には「退職所得控除」があり、大学卒業から定年まで同じ会社に勤めた場合、控除額は2410万円となる。平均的な水準の退職金なら、税金は一切かからない。

 一方、年金方式にも「公的年金等控除」が適用されるが、毎月の公的年金も合算された上で控除額が算出されるので、所得税や住民税を払わなくてはならない。ファイナンシャルプランナーの藤川太氏(家計の見直し相談センター)の指摘だ。

「手厚いはずだった企業年金は運用難に苦しみ、2010年に経営破綻したJALのように給付カットされるケースもあります。この先、年金が減らされる不安に駆られるなら、できるだけ一時金でもらって、安心できて得できる方法を考えたいですね」

 重要なのは一時払いで受け取った大金をどう扱うかである。退職金は大きな額に見えるが、公的年金と合わせても、老後資金が足らなくなる恐れがある。

 退職金2000万円、貯蓄500万円の計2500万円が手元にある60歳の夫婦の老後資金の推移を藤川氏がシミュレーションした結果、夫が65歳まで働き(手取り年収240万円)、それ以降は夫婦で年間約260万円の年金を受け取るという一般的なケースでさえ、80代半ばで手持ちの資金が底を突き、「老後破産」へと突き進んでしまう(物価上昇率、賃金上昇率ともに1%で試算)。

「それを未然に防ぐためには、まず家計の収支を見直す必要があります。生活費を節約するのはもちろん、燃費のよい小さな車にしたり、家電を省エネ性能の高いものにしたりして支出を減らしていかなければなりません」(藤川氏)

※週刊ポスト2015年8月21・28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト