「すべて国民は法の下に平等」は、中学の授業で教えられる憲法の基本原則だ。だが、それはあくまで「建前」に過ぎない。中央集権国家で少子高齢化が進むこの国では、年齢や性別、居住地によって何らかの「線引き」をして受益と負担を分けなければ1億2000万人が住む国家が成り立たない以上、それを「必要悪」といわざるを得ない部分はある。
ただし、その「線引き」が国民のためではなく、政治家や官僚の都合や怠慢によって行なわれ、国民に格差を付けているケースもある。例えば安倍政権が政策の看板に掲げる「女性の活躍促進」によって、専業主婦への公的差別が拡大している。
政府は女性の社会進出を促すために、「待機児童ゼロ」を目標に保育園などに補助金を投じ、定員を全国で40万人増やす政策を進めているが、「育児をしながら働く女性」へのサポートが手厚くなっている。
例えば、東京都板橋区の調査資料(2013年度実績)によると、認可保育園の園児1人に投じられている税金(保育経費から親が負担する保育料を引いた金額)は「0歳児」で月額約39万円、年間でなんと468万円にのぼる。
多くの自治体では、認可保育園だけでなく、無認可の保育所でも一定の条件を満たしていれば、所得に応じて預けている子供1人あたり月額数万円の補助金が出る。
それに対して保育園に預けず、自宅で子供を育てている専業主婦には1円の補助金も出ない。専業主婦と保育園に通わせている働く女性の間には、制度上、月額39万円(0歳児)もの《子育て差別》があるのだ。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号