制度の改定により、8月から介護保険サービスの一部の利用者は、自己負担が2割となった。介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があるが、どんな点に気を付ければよいのか?
要介護認定を受けるにあたって、最も重要なのは実情に即した、より重い認定を受けることだ。要介護度は「要支援1」から「要介護5」の7段階に分かれる。段階ごとに自己負担1割(一部は2割)で利用できる介護サービスの支給限度額が決まる。限度額が多ければ自己負担1割で使えるサービス量は増え、本人はもちろん、家族の負担も減る。
重い認定を受けるメリットについて、ケアタウン総合研究所の高室成幸・所長がいう。
「限度額いっぱいまで使う人は稀ですが、枠に余裕があると、家族が病気などで一時的に介護ができなくなった緊急時でも、ショートステイ(短期入所生活介護)などを介護保険で利用できます。また、今年4月以降、特別養護老人ホームに入れるのは原則、要介護3以上の人になりました。将来、特養に入ることが必要になるかもしれないので、実情に即した要介護認定を受けておいたほうがいいのです」
認定の流れは次のようなものだ。申請後、調査員(市区町村の職員やケアマネジャー)が訪問調査を行ない、「基本調査」と「特記事項」を作成する。「基本調査」は、50項目以上の質問に対し、本人があてはまる状態を選ぶ。実際に動作を行なうよう求められる場合もある。
「特記事項」は、「基本調査」について特記すべき内容や具体的な状況が記入される。「基本調査」をもとにコンピュータによる暫定の判定が行なわれ、「特記事項」や「主治医意見書」などを加味し、複数の専門家による介護認定審査会で要介護度が最終判定される。
ただ、訪問調査は原則1回しかなく、調査時にたまたま本人の体調が良かったり、本人が調査員の前で無理して頑張って動いたりして、実情より軽く認定される例は少なくない。
訪問調査時に大切なことは、調査員の質問に「YES」だけで答えないことだ。「ちゃんと歩けるか」を聞かれた時に、「YES」と答えるだけでは、スタスタ歩ける場合も、ずり足でようやく歩ける場合も、どちらも「歩ける」という判定になってしまう。具体的な答えを伝えた方が良い。
また、訪問調査は「夕方」に受けるのがいいという。実際に訪問調査を行なうケアマネージャーが明かす。
「夕方になれば、要介護者に疲れが出てくる。介護する側の負担が重くなるのも夕方以降です。その実態を調査員に見てもらうために、夕方の訪問をお願いするといい。ただ、重い認定にしようと歩けないように演技する人がいるが、それは絶対にダメ。我々も慣れているから、すぐわかる。演技されると、一生懸命『特記事項』を書く気がなくなる」
※週刊ポスト2015年8月21・28日号