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海外人気ベーカリーが続々上陸 背景にパン消費の老高若低化

 真夏日を記録した8月中旬のある週末、東京・銀座には50人ほどの行列ができていた。じっとしていても体中から汗が噴き出すような暑さの中でも、彼らが辛抱強く並ぶ理由があった。

 ここは人気パン店「セントル・ザ・ベーカリー」。パン店検索サイト「おいしいパン.net」で、全国1位を獲得した名店「VIRON」(東京・渋谷、丸の内)が2013年6月にオープンした「食パン専門店」だ。行列に並んでみると、50~60代の男性が多いことに気付く。料理研究家・藤田千秋さんの話。

「レシピ本が主流でしたが近年はパン店を特集する雑誌や書籍が数多く出版されるなど、空前のパン食ブームが起こっています。それに敏感に反応しているのがシニア世代なのです」

 ブームの始まりは、2013年4月にセブン-イレブンが発売した「金の食パン」の大ヒットといわれる。やがてブームは「より本格的なパン」を求める動きに広がっていく。前出の「セントル―」以外にも大阪の食パン専門店「LeBRESSO」など、全国的に行列のできるパン店が急増中なのだ。

 海外の人気ベーカリーも続々と日本に上陸している。仏の「ブリオッシュドーレ」「メゾン・ランドゥメンヌ」、米の「ドミニクアンセルベーカリー」などが日本に進出した。「セントル―」に並んでいた50代男性がいう。

「ほとんど毎朝パンです。美味しいパンを食べると生活が豊かになった気がするんですよ」

 一部のシニア男性だけがパン食になっているわけではなく、日本中で“オヤジのパンブーム”は広がっている。全日本パン協同組合連合会の福井敬康・専務理事の話。

「いま日本のパンの消費を支えるのは50~60代で、6~7割を占めます。その中心は男性と見られています」

 日経消費インサイトが全国の20~69歳の男女1000人を対象に実施した調査によれば、パン(食パン、菓子パンなど)を1日1回以上食べる層は60代が51.0%でトップ。2位も50代の42.5%で、20代は26.0%に留まる。「老高若低」がハッキリと表われている。料理研究家・茨木くみ子氏が語る。

「学校給食で毎日のようにパンを食べていた世代にとっては、パンは非常に懐かしいものだといえます。GHQの指示で始まった学校給食では、小麦大国の米国が、米を主食とする日本人に小麦をたくさん買わせようとする狙いがあったといわれています。

 一方、当時の日本人にとって米国人のライフスタイルは憧れであって、パンはその象徴だった。年配の男性がパンにハマるのは、そういった幼い頃の思いが影響しているのかもしれません」

※週刊ポスト2015年9月4日号

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