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安倍談話 公明党の顔色窺い保守派も気遣う政治的妥協の産物

 安倍晋三首相は、戦後70年談話で、過去の戦争を「侵略」と位置づけて謝罪した村山談話(1995年の戦後50年談話)に象徴される政府の歴史認識を事実上、転換しようとした。保守勢力もそうした安倍首相の姿勢に期待を寄せて支持してきた。

 歴史認識見直しを掲げる『新しい歴史教科書をつくる会』は安倍談話の発表にあたって、3万人以上の署名を集め、談話に〈「侵略」や「おわび」を一方的に日本を断罪する文脈で入れることのないよう、強く要求する〉という要望書を官邸に申し入れている。

 だが、安倍首相は最終的に「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「おわび」という村山談話の4つの贖罪キーワードを全部盛り込まざるを得なかった。神道学者で歴史研究家としても知られる高森明勅氏の見方はこうだ。

「安倍談話の印象は、村山談話を事実上撤回する目的で発案されながら、政治的事情で不可能になり、やむなく村山談話を極力薄めた内容にしたということです。

 本当はもっと安倍色を前面に出した強気な談話にしたかったのに、安保法制で支持率が下がり、これ以上落とせなくなった。公明党の顔色も窺う必要があった。そのために入れる予定になかったおわびや植民地支配といった言葉を盛り込んで玉虫色の巧妙な談話に仕上げた。まさに政治的妥協の産物になってしまった」

 そのままでは保守派の失望を買いかねない。安倍首相はそれを防ぐために談話に保守派が喜ぶ“粉飾”を施した。反省やおわびに「私は」という主語をあえて入れずに主語を曖昧にしただけではない。

「談話には『アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました』とか、『日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました』など安倍応援団的な保守派の喜びそうなフレーズがてんこ盛りにされている。

 一方で、戦後70年談話なのだから昭和の戦争についての認識を明確に語るべきなのに、大東亜戦争や支那事変といった言葉さえ出ていない。あえていえば読み手の誤解を意図的に狙うようなトリッキーな文章です」(高森氏)

※週刊ポスト2015年9月4日号

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