国内

妊娠率2~3割 終わりの見えぬ不妊治療が精神肉体に負担大

「つい先日、一緒にテレビを見ていた母に“私も体外受精大変だったなぁ…”とつぶやくと、“あなた体外受精なの!?”と急に大きな声を上げてきて。そんなふうにショックを受けた顔を向けられると、こっちが落ち込んでしまいますよね」

 2才の息子を持つ宮下恵理香さん(仮名・41才)はそうため息をもらした。夫の両親には体外受精でできた子供だとは伝えていない。

「隠しているつもりはないんですが、言う必要もないかなと…。ただ、“2人目は?”と聞かれると、この子を授かるのにどれほど大変だったかをぶちまけてしまいたい気持ちもあります」

 夫婦の6組に1組が不妊治療や検査を受けたことがあるという日本は、世界一の「不妊大国」といわれている。不妊治療の最初のステップは「タイミング療法」だ。排卵日を特定し、その前日や当日に性行為を行うことで妊娠の確率を上げる。

 次のステップが、子宮にカテーテルを通して濃縮した精子を注入する「人工授精」。数日に1度は排卵誘発剤の注射やホルモン検査などを受けるため、頻繁に病院へ通わなければならない。それでも妊娠しなければ、医師から「体外受精」を勧められることになる。前出の宮下さんが続ける。

「結婚から5年経っても赤ちゃんができなくて、35才で検査に行きました。最初の1年はタイミング療法、それから人工授精を3回しましたが失敗。そこで37才のときに体外受精に踏み切ったんです」

 体外受精とは、夫婦から採取した卵子と精子を医師の手によって体外で受精させ、受精卵の細胞分裂を確認してから子宮に戻す高度不妊治療だ。

 日本産科婦人科学会(以下、日産婦)によれば、2012年の総出生数は約103万7000人で、そのうち体外受精で生まれた子供は3万7953人。実に27人に1人の割合になる。

 体外受精によって生まれた子供が増える一方で、その妊娠率は2~3割とされ、終わりの見えない不妊治療は精神的にも肉体的にも大きな負担を強いられる。

「採卵前にのんだ薬で吐き気が収まらず、何度も吐きました。採卵時の注射も痛くて痛くて涙が…。採卵後に吐いているとき、“こんなにつらいならもうあきらめよう”って何度も思いました。

 半年に1度のペースで2度やりましたが失敗でした。夫に対して申し訳ない気持ちと“自分は女として不完全なんだ”っていうストレスで押しつぶされそうでした。ネットに“糖質過多だと卵子が育ちにくい”と書いてあったのを見た日の夕食からご飯を炊くのをやめ、焼き魚と野菜しか食べないとか。ご飯なんて夫には出してあげればよかったと思うのですが、当時はそんな余裕もなくて…。これで最後にしようと決めていた3度目の体外受精で授かることができました」

※女性セブン2015年9月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン