丹精込めた盆栽や、ベランダガーデニングの水やりに欠かせないじょうろ。一家に1台はありそうな品だが、今回紹介するのは、世界中から注文が殺到している銅製のじょうろ「根岸産業 銅製竿長如雨露」だ。作っているのは東京都墨田区の『根岸産業』。日本で唯一の盆栽じょうろメーカーだ。
「昭和初期にブリキ職人だった祖父の技術をもとに、昭和41年から父が盆栽用の銅製じょうろを作り始めました」
そう語るのは、3代目となる根岸洋一さん。その特徴は、細く長い竿だ。
「注ぎ口までを長く伸ばすことで、水圧がコントロールできるんです。世界でいちばんいい水の出かたを目指した結果、世界でうちだけの、このデザインが生まれました」(洋一さん。以下同)
この如雨露の利点は数多い。少し挙げてみると…。
【1】水が出る蓮口には、針の先ほどの穴が、約200個も開いており、穴の大きさを表裏で微妙に変えているため、バランスよく水をかけられる。
【2】水滴は小さなまま地面に届くので、勢いがあるのに、水あたりがやわらかく、苔などの繊細な植物を傷めない。
【3】給水口には、「こし網」がついており、雨水などを溜めても、ゴミを排除して使えるなど、細部にまで工夫がされている。
「銅の殺菌力で水が腐りにくく、水に溶け出す銅イオンの効果で、盆栽の苔の生育もよくなるといわれています」
洋一さんが父の跡を継いだのは6年前。現在は母・絹江さんとふたりで作業している。1日に5個作るのが精一杯だ。
「機械を導入すると、銅板に厚みが必要になり仕上がりが重くなるので、使いづらくなるんです。それでは本末転倒。使いやすいものをお届けしたいので、時間をかけて、手作りしています」
現在も、盆栽家や世界で活躍する園芸家などのアドバイスをもとに改良が続けられている。大事にすれば約30年使用でき、部分ごとの修復も可能というから、大切に使いたい、一生もののじょうろだ。
※女性セブン2015年9月3日号