温泉やプールなどでは長らく「入れ墨・タトゥーがあるお客様はお断りします」と利用を断るのが当たり前だったが、訪日観光客の激増にともない対応に変化が現れている。今年4月に総合リゾート運営会社の星野リゾートが、10月から配布する専用シールで隠せる場合に入浴を認めると発表した。この発表以来、タトゥーカバーシールやタトゥーカバーステッカー、ファンデーションシール等と呼ばれるタトゥー隠しシールが注目を集めている。
肌と同じ色の粘着力が強い耐水性のシールでタトゥーを隠すシールは、輸入品も含めて複数種類ある。温泉やスパ、プールや海水浴場、スポーツクラブなどで使われている。そのうちのひとつ「タトゥーカバーAQUA」を企画販売している株式会社ALAEの担当者によると「今年の春先から、目に見えて問い合わせや取引が増えています」という。
「タトゥーカバーという商品は2011年に企画を始め、2013年1月から店舗販売をスタートしました。今ではドン.キホーテやヴィレッジヴァンガードの店頭にあります。きっと必要だと思われる施設へ営業をしても、以前はどこも反応が小さかった。最近では競合商品も増え、施設側から必要だといわれることが増えました。外国人観光客が増えたこと、星野リゾートがシールで対応して受け入れを始めると発表したのがきっかけですね」
江戸時代に罪人のしるしとして使用され、反社会的団体に所属する人間の特徴だったこともあり、日本の温泉などでは入れ墨やタトゥーのある来場者を断ることでトラブルを未然に防ぐ対応をとってきた。しかし、2013年9月にニュージーランドの先住民の女性が民族の風習である刺青を理由に温泉での入浴を断られたことが波紋を広げた。そして、入れ墨は文化的背景によって様々な意味を持つ、という当たり前の議論がようやく始まった。