元西武グループ会長の堤義明氏(81)が窮地に立たされた。堤氏の資産が買い叩かれ、“王国”からの完全追放を余儀なくされようとしている内幕を、8月31日発売の週刊ポスト(9月11日号)が報じている。
堤氏のグループ掌握の手法には独特の仕組みがあった。上場企業の西武鉄道は、未上場で実質堤家の持ち株会社だったコクドが支配する資本関係にあった。そのコクドの筆頭株主として堤氏はグループを資産面で支配した。
こうしたワンマン経営が仇となり、2004年に有価証券報告書の虚偽記載が発覚して西武鉄道は上場廃止、堤氏はグループの全役職を辞任した。
その後のグループ経営を引き受けたのがメインバンクであるみずほ銀行出身の後藤高志氏。後藤氏は米投資会社サーベラスに増資を引き受けさせて筆頭株主とし、グループを再編。西武ホールディングス(HD)が設立され、後藤氏が社長に就任するとともに、創業者一族である堤家は追い出される形になった。
しかし、“歪な親子関係”は残っていた。NWコーポレーション(NW社)という会社がある。前身はコクドであり、今も西武HDの株を約15%保有し、サーベラスに次ぐ第2位株主に名を連ねる。堤氏にとって自身と西武をつなぐ最後の接点といえる。
だが、NW社の持株会は7月末、「所有株の返還」を案内した。
昨年4月、西武HDが再上場し時価総額は8550億円(8月25日終値)に膨らんでいることから、単純計算してNW社の株にはその15%の資産価値があると考えられる。1株に換算すれば6000万円になるという。だが、NW社が設定した価格は1株30万円だった。西武問題に詳しいジャーナリストは同誌にこう語っている。
「西武HDはこれまでも上場企業を未上場企業が支配するという歪な構図を修正してきたのですが、NW株返還の動きもその一環です。NW社の株主は堤氏の“家臣”ともいえる人ばかりですが、彼らから株を取り上げ、持株会のメンバーを入れ替えれば、堤氏は孤立する。西武側は最終的に堤氏も手放すことになるはずと踏んでいるのでしょう」
堤氏のNW社の所有株数は757株(発行株式全2099株の36%)で、1株30万円としても約2億3000万円もの大金が手に入る。堤氏は持株会の一員ではないため、NW株を売却する場合はこれより高額になると考えられるが、それでもかつて3兆円の資産を持っていた堤氏への“手切れ金”としては非情な最後通牒といえよう。
同誌は西武HDやNW社など関係各所にも取材し、見解を聞くとともに、堤氏の近況も報告している。