米大統領選で「台風の目」となるドナルド・トランプ氏(69)。不動産王として米国では知らない人がいないくらいの有名人だが、筋金入りの反日家でもある。超格差社会のあおりを受けて貧困化が進むブルーワーカー層に「悪いのは日本や中国だ」と訴えることで旋風を巻き起こしている。
トランプ氏による日本叩きの主張の大半は、根拠のない暴論だが、一部には日本に突き刺さる厳しい批判もある。特に重大なのは、日米同盟が片務的であるとの批判だ。もちろん、日本からすれば、属国条約ともいえる「日米地位協定」や日本側が負担している「思いやり予算」など、山のように反論があるものの、事実は事実である。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏はいう。
「米国の大多数の人が、安全保障において日米同盟が大切だと認識しているが、細かいところまでは知らず、興味もない。それが『実は、日本にはアメリカを守る義務はない』と聞いて驚いたわけです。一般大衆も、日本に対し応分の負担を求めるべきだと考え始めている」
しかも、片務性を問題にしているのは共和党の保守派だけではないという。
「民主党リベラル派のシャーマン下院議員も、7月の下院外交委員会の公聴会で、『日米同盟はまったくの一方通行だ。日本に防衛負担をもっと増やしてもらうにはどうすればいいか』と発言している。不吉な前兆だと思います」(古森氏)
いまのところ民主党のヒラリー・クリントン氏が支持率ではトランプ氏より頭一つ抜け出ているが、民主党政権になっても安心とはいえない。それどころか、ヒラリー氏は日本にとって危険人物といっていい。
「彼女は中国を非常に重視していて、夫のビル・クリントン氏もそう。アメリカ経済にとって大きな問題は日本より中国ですが、中国への批判をかわすために、日本をスケープゴートにする可能性がある」(元外外務省国際情報局長の孫崎亨氏)
※週刊ポスト2015年9月11日号