現在、生活保護受給世帯は急増している。今年3月時点で過去最多の162万世帯に上り、そのうち約半数にあたる79万世帯が高齢者だ。この10年でおよそ2倍に膨らんでいる。
生活保護費は、たとえば東京23区に住む60代単身ならば月に約13万円、60代夫婦で約18万円だ。この金額が国の定める「人が生きていくための最低生活費」である。
特に深刻なのが女性の貧困だ。65才以上のひとり暮らし女性の「相対的貧困率」は44.6%(2012年)に達し、ひとり暮らし男性の約1.5倍になる。相対的貧困率とは、税金や社会保険料を除いた可処分所得が年122万円に満たない世帯の割合を示している。つまり、現預金や不動産を考慮しなければ、ひとり暮らしをする高齢女性の、実に2人に1人が貧困にあえいでいるといえるのだ。
お金のない生活は健康面さえも蝕むというデータがある。2012年の研究によれば、年収250万円以上の「上流老人」に比べ、下流老人は女性では2.5倍、男性では3.5倍死亡率が高いとされる。
うつ状態にも陥りやすい。年収400万円以上の高所得グループに比べ、100万円未満の低所得グループは女性で4.1倍、男性で6.9倍、うつ状態の人が多かった。
下流老人への転落は、華やかな芸能人も例外ではない。この8月初旬、七回忌を迎えた女優の大原麗子さん(享年62)も晩年は生活に苦しんでいた。
結婚式に当時の芸能界史上最高額といわれた2億数千万円を費やし、世田谷区の大豪邸で暮らしていた大原さんだが、20代後半で難病のギラン・バレー症候群を患って人生が反転した。乳がんやうつ病の発病も重なった上に、心臓弁膜症とリウマチを併発して車椅子生活だった母親の介護も長年にわたって続けた。
年を取るにつれて生活は苦しくなり、所蔵する高価な絵画や骨董品はすべて売り払った。晩年には、年金の受給開始年齢になる前に一部を受け取れる「繰り上げ受給」を申請し、さらに弁護士と一緒に社会保険事務所を訪れて、「年金額がなんでこんなに少ないんですか」と抗議したほどだった。そして往年の大女優は貧窮のなかで息を引き取った。
※女性セブン2015年9月17日号