文部科学省が7年ぶりに改訂した高校生向け保健体育の副読本は、医学的に女性は20代、30代から徐々に妊娠する力が下がり始め、40歳を過ぎると妊娠が難しくなるという説明をグラフとともに掲載した。研究では、女性の卵子は老化し、35歳で不妊治療した人のうち、子供が生まれた割合は16.8%、40歳では8.1%とかなり低い結果が出た。
それに対し、男性は高齢でも父になる有名人もいるため、精子の働きは年齢に関係ないと思われているが近年の研究で、精子もある年齢を過ぎると老化、妊娠させる能力が低下することがわかってきた。
獨協医科大学越谷病院副院長で泌尿器科の岡田弘主任教授に聞いた。
「精子の力を見るため、哺乳類のマウスの卵子に子供がいる人の精子と、いない人の精子を別々に入れて卵子の活性化する力をみました。精液検査では同じでも、子供がいる人の精子は、年齢が高くても卵子活性化の能力は低下しないのですが、子供がいない人の精子は35歳を過ぎると活性化の能力が落ちる結果になりました。不妊の原因は卵子だけでなく、精子の老化もあると考えられます」
他の研究では、精子の濃度は40歳が分岐点で、1年ごとに0.78%ずつ減ることがわかった。また、子供の性別は精子が決めているが、高齢男性の場合、女児が生まれる確率が高まる。
精子の染色体は23Yと23Xで、卵子はすべて23Xだ。23Y精子を受精した場合は46XYで男児になり、23X精子が受精した場合は女児となる。加齢によりY染色体をもつ精子が減るので、女児が生まれる確率が高くなる。つまり、年齢とともに精子の質も変化するのだ。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号