中国本土から台湾経由で米国移住した女性実業家フローレンス・ファン(方李邦琴=80)氏がアメリカ・サンフランシスコに所有する建物を改修し、中国国外初の「抗日戦争記念館」がオープンした。開館式には中国本土から国務院僑務弁公室主任(元外務次官)、北京大学副学長、韓国総領事らが出席し、華々しく行われた。「霧の都」ことサンフランシスコを舞台にした中国「反日宣伝」の現場を、在米ジャーナリストの高濱賛氏がレポートする。
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式典後、館内に入る。壁には満州事変に始まる日中戦争での「日本軍の蛮行を立証する写真」(ファン氏)がパネルに多数掲げられ、その経緯や背景を記した説明文が中国語と英語でそれぞれ書かれている。
ハイライトはなんといっても南京事件だ。パネルのタイトルは中国語で「南京大屠殺」とある。「屠殺」は日本語の「虐殺」を意味する。
それが英語では「NANKING HOLOCAUST」(南京のホロコースト)と訳されている。 「ホロコースト」は、特にナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺を意味する言葉だ。
『ザ・レイプ・オブ・南京』(1997年)の著者アイリス・チャンが同書の副題にその言葉を採用し「南京大虐殺はホロコーストと同じだ」と書いた時、世界中のユダヤ人から「ホロコーストは世界史上類を見ない残虐行為であり、他のいかなる行為とも比較できない」と猛抗議があった。それでもあえてここに「南京ホロコースト」と記したのは、そのほうが一般市民に通りがよく、米国での反日運動により効果的だと考えたからだろう。
目新しいといえば、戦争当時、国民党政府軍を支援して日本軍を空から攻撃した米義勇軍「フライング・タイガース」の活躍を示す写真や資料が展示されている点だ。「中国とアメリカが日本軍を打ち破るために手に手を取り合って戦った事実」(ファン氏)を、米国内の記念館では大々的に宣伝するのが狙いのようだ。
小学1年生ぐらいの男の子を連れ、一番乗りで入館した中国本土から来たという若い母親は「この記念館を誇りに思います」とにこやかに一言。米国までやってきて、「中華民族による独断と偏見の歴史観」を小さな息子に植えつけさせることが出来ることへの喜びか。末恐ろしさすら感じる。
カリフォルニア州の女傑・ファン氏の発案で始まり、中国政府の全面的な協力支援で開館に漕ぎ着けた「抗日戦争記念館」という反日プロパガンダセンター。そこを訪れた見学者は、日本軍による「南京ホロコースト」や、「かつて共に戦った中国と米国」という一方的な歴史観を見せつけられることになる。
近く市内の公有地に設置される見込みの「従軍慰安婦碑」と合わせ、「霧の都」は反日色に彩られている。
※SAPIO2015年10月号