日本人の1日の塩分摂取量は男性で11.3g、女性で9.6g(平成24年 国民健康・栄養調査 20才以上の統計より)。これは、国際的にも多いほうだというが、塩分の摂りすぎはどんな弊害を招くのだろうか。
そもそも、塩は人体に不可欠といわれてきた。それは私たちの祖先が海から上がった時、体内に塩をため込むしくみを持つことで、陸上生活を可能にしたことに由来すると、循環器専門医の渡辺尚彦さんは説明する。
「食塩つまり塩化ナトリウムに含まれるナトリウムは細胞外液(体液)の中に存在し、濃度を一定に保つ働きがあります。このナトリウムが欠乏すると細胞内の浸透圧バランスが変わり、意識障害を起こすことがあるのです」(渡辺さん。以下「」内同)
とはいっても、ヒトの生命維持に必要な塩分は、「わずか1日3g程度」と渡辺さん。減塩先進国のイギリスでは、加工食品の減塩が進み、2025年までに1日の総摂取量を3gに引き下げる予定だ。つまり、本来なら1日3gの塩分しか必要がなく、それを上回るしょっぱい味付けでないと我慢できない人は、ある種の“食塩中毒”状態にあるといえそうだ。
家族で同じ料理を食べたとしても、高血圧になる人とそうでない人がいるように、食塩感受性といって、同量の食塩が体に作用しやすい人とそうでない人がいる ため、摂取塩分を控えるだけで血圧がすぐ下がるとは限らない。とはいえ、塩分過多は基本的に高血圧や骨粗鬆症、認知症などを引き起こしやすく、将来への不安要素となる。
「高血圧に起因するものとして、脳血管疾患や心血管疾患などの循環器系の病気があるほか、最近の研究では胃がんや骨粗鬆症にも塩分の摂りすぎが影響することが判明しました」
また、塩分を摂りすぎると水分の排出が悪くなり、女性には大敵のむくみの原因にも。だからこそ食塩感受性に関係なく、すべての人が若いうちから減塩を始めることが大切なのだ。必要以上の塩分摂取過多は、まさに百害あって一利なしだ。
※女性セブン2015年10月8日号