苛烈化する「宅配戦争」の実態に迫り、話題のビジネスノンフィクション『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』(横田増生著、小学館)。著者は、ヤマト運輸と佐川急便のシェア争いの弊害を指摘している。(文中敬称略)
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ネット通販市場の拡大で宅配便の荷物量は増えたが、しかし運賃単価が低下傾向にあったため、宅配業界は長年、“豊作貧乏”と揶揄されてきた。“社会のインフラ”という地位は得たものの、国の公共事業として長い歴史を持つ電気やガス、水道や電話・通信などと比べると、その経営環境は決して盤石とはいえず、取扱個数の急増が宅配のネットワークの至る所に歪みとなって表れている。トランプで作った城のような脆弱さを持っている。
経済の原則からすれば、市場のプレイヤーが淘汰され寡占化が進めば、価格、この場合運賃は上昇するはずだが、現実はそうはなっていない。
ヤマト運輸では、2000年代初頭には、一個当たり750円近くあった運賃単価が、底となる2014年3月期の決算では500円台後半にまで下がった。佐川急便では、2000年代初頭に1000円台近くであったのが、底となる2013年3月期には500円を切るまで落ちている。
ある業界関係者は現状を指して、「佐川清(佐川急便創業者)と小倉昌男(ヤマト運輸元社長)という二人のカリスマ亡き後の、ビジョンなきシェア争いの結果だ」という。
佐川清は企業間の荷物に的を絞り佐川急便を急成長させてきた。一方、小倉昌男は個人間の荷物を主戦場と決めて宅急便を成長させてきた。その二強が、通販から出る企業発個人向けの荷物を奪い合い、運賃のダンピング合戦に追い込まれた結果、低運賃にあえいでいるのが実情だ、というのだ。
※横田増生氏・著/『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』より