安保法案の審議にあたっては、同法案に関する責任者、中谷元・防衛相は自衛隊員のリスクをめぐる首相答弁との閣内不一致が批判された。
首相が「安保法制で抑止力が高まる」とリスク増加を否定したのに対し、陸上自衛隊出身の中谷氏は“正直”に「(隊員のリスクは)増える可能性がある」と答えて後に撤回する。
この人の発言で忘れてはならないのは、3人の憲法学者が国会で「安保法案は違憲」と述べたときに慌てて漏らした本音の方だ。
「国民の命と平和な暮らしを守っていくために、憲法上、安全保障法制はどうあるべきかは非常に国の安全にとっては重要なことだ。こういった観点で与党で議論をして、現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけば良いのかという議論を踏まえて閣議決定を行なった」
憲法学者たちの違憲見解に対して見苦しい反論をしたのが菅義偉・官房長官だ。
「安保法制を合憲とする学者はいくらでもいる」と会見で開き直ったものの、国会で「合憲論者とは具体的に誰か?」と突っ込まれると3人しか名前を挙げられず、「数ではないと思っている」と前言をひっくり返した。その末に、最後は「合憲か違憲かは、最高裁が決めるのだ」と「違憲立法かどうかを含めて最終的な判断は最高裁判所が行なう」と述べた安倍晋三・首相と同様の発言で逃げた。
※週刊ポスト2015年10月9日号