《ナチュラルストッキングをはいたヒにゃ、もうまわりの人たちから何を言われるかわからない。(中略)もうナチュラルストッキング女イコール、超ダサ女ということになってしまう》
林真理子さんが2001年の『美女入門 PART3』(マガジンハウス)でこのように書いたかと思うと、酒井順子さんは2003年の『負け犬の遠吠え』(講談社)で、ナチュラルストッキングをコンサバな勝ち組女性の代名詞的に取り上げて、こう書いた。
《常識的な丈のスカートから伸びるナチュストをはいた脚というのは、ダサすぎもせずおしゃれすぎもしないという絶妙な存在感を、常に醸し出してくれる》
ナチュラルストッキング、通称ナチュストとは、装飾がなく、肌の色に近いベージュのストッキングのこと。日に日に秋めくこの時期、タイツにはまだ早いけど素足だと季節感がなさすぎる! というわけでストッキングをはく人が増えるわけだが、そのチョイスは真っ二つに分かれる。つまりナチュストか、透け感のある黒ストか。
日本ではスタンダードなナチュストだが、なぜか海外ではあまり好まれない。
だから、輸入される質の高いストッキングは黒を中心とした色つきのものが大半で、しかも、価格も3000円を超える高額なものが珍しくない。ある時期からおしゃれに敏感な女性たちはこの舶来ものに飛びついて、ドメスティックなナチュストには「時代遅れ」の烙印を押した。
しかしながら、年配の女性の多くは反・黒ストだ。
「暗い色の洋服には合うが、薄い色の服に合わせると品が悪くなり、水商売っぽくなる」(東京都・67才・女性)
というわけで、コンビニで手軽に安く買えるナチュストを選択するのだが、それでも20代からアラサーやアラフォー女子の間では、冒頭に引用した発言などの影響からか、ナチュスト比率は圧倒的に低い。
そして彼女たちが支持するのは黒ストだ。その理由は、脚が細く見えるから、だけではないようだ。
「どんなときでも、私はナチュストははきません」
こう断言するのはスタイリストの福田栄華さん(43才)。
「いかにもOL風ですごくおばさんに見えますし、海外のセレブはドレスアップするときも素足です。冠婚葬祭ではストッキングをはくべきだと思いますが、そのときも黒ストでいいのではないですか」
と、はくなら黒スト派の立場を貫いている。
ナチュストに厳しいのは福田さんだけではない。とあるファッション誌編集者も、「こんなにもファッションをダサくするアイテムは、ほかにありませんよね」とナチュストを一刀両断。彼女は、編集部のアルバイト女性がナチュストをはいていたら、はくのをやめるように注意するほどだという。
ナチュストを忌避し、何が何でもそれだけははかない。そう決めている人たちは確実にいるのだ。
※女性セブン2015年10月15日号