なんとなく知っているつもりでも、実はよくわかっておないことも多いマナー。たとえば、「上座、下座」はその一つだろう。室内で座る位置で、目上の人や年長者への敬意や、来客に対するもてなしの心を、示すものだが、一体どこが上座なのだろうか。人財育成コンサルタントでマナー講師を務める美月あきこさんが説明する。
「入り口からもっとも遠い場所が良い席=上座です。来客には上座をすすめ、自分が訪問した際は、何も言われなければ下座に座るのがマナー。ただし、上座をすすめられた場合は固辞せず、恐縮しつつも素直に座る姿勢を見せた方が、スマートな対応といえます」(以下「」内、美月さん)
ビジネスの場だけに限らず、マナーが身についていれば、どんな場所でも敬意を表すことができるもの。しかも、席次は部屋の中だけでなく、あらゆる場所に存在する。多くの場合、入り口から遠い方や中央が上座となるが、迷った場合は左右を意識するといい。
「日本には、『左上右下』という伝統礼法があり、左が上位。このため、大きなテーブルに座る場合、中央の上座からみて、左側が上位とされています。席次の上座は、中央、左、右の順と覚えて。ただし、西洋の場合は日本と逆の右側が上位なので注意を」
いすに左側から座るのは、西洋式による。その昔、いすに座る際に、左腰に携帯していた剣が邪魔にならないように左から座っていたという習慣の名残りからといわれている。
「着席だけでなく、退席の際も左側からがマナー。また、起立して乾杯をする際も、左側に立つようにすると、マナーを心得ていると評価が高まります」
来客を先導して案内する場合は、左側を歩くのがマナー。「ホテルでもご案内係はお客様の左斜め前を歩き、お客様には廊下の中央を歩いていただくのが基本です。このとき、体をやや斜めに向けて右肩越しに相手を気遣い、話しかけながら歩くといいでしょう」
階段を使う場合、案内する側が先に上がると、来客を見下ろす形になってしまうので、「階段で2階までお願いします」と伝え、少し後ろを歩くようにする。
目的の階に着いたら、すぐさま前へと移動し先導を始めるといい。
「階段の場合は、お客様が安全に歩けるように手すり側をすすめ、自分は真後ろでなく、壁よりの斜め後ろを歩くようにします。下り階段の場合は先導してもかまいません。エスカレーターの場合も同じです」
※女性セブン2015年10月22・29日号