厚労省の国民生活基礎調査(2013年)によれば、肩こりの自覚症状がある日本人は約1179万人におよぶ。約1328万人の腰痛と並ぶ“国民病”であり、根治療法がないため“長いお付き合い”になる人が多い。そうした人の間で話題になっているのが、9月9日放送のNHK『ためしてガッテン』で放送された「ああ!首と肩がツライ 肩こり根治マニュアル」と題する特集だ。反響を呼んだのは注射で治す“画期的な治療法”だった。
番組で紹介されたのは群馬県前橋市にある「木村ペインクリニック」だ。鍼灸院や整体などで肩こりが完治しなかった患者が噂を聞きつけて殺到しているという。
番組では同クリニックの、こんな診察・治療が紹介された。木村裕明院長が診療室のベッドに横たわる患者の首筋から肩にかけて、エコーを当てる。筋肉の断面図が映し出されたエコー画像を木村院長と患者がベッド脇にあるモニターで一緒に確認。そのモニターには白い筋繊維が何本も映し出されているが、その中に1本うっすら青く光っている筋がある。
ここで木村院長は注射器を手にして、「生理食塩水を入れますね」といって患者の肩口に注射。すると画面に映し出されていた青白く光る筋がみるみるうちに消えていったのだ。
一見ただ注射を打つだけなのだが、木村院長の診察を受けた患者はいずれも番組内で驚きの効果を口にしている。
男性患者の1人は施術後、それまで曲がらなかった首を左右に軽々と動かしながら、「全然違う」とつぶやいた。別の患者も「張りとかも違います。動きも楽です」(男性患者)、「劇的に良くなったのでびっくりしています」(女性患者)と語っている。
モニター上の青白く光る筋が消える様子を見ていると、それまでのこりが“スッ”と落ちたような感覚になる。この「青白く光る筋」こそ、最新の研究で明らかになった、肩こりの真の原因である「筋膜」と呼ばれるものだ。
「筋膜」とは、筋肉を包む薄い膜のことを指す。人間の体には約600の筋肉があり、それぞれ数千から数万本といわれる筋繊維で構成される。そうしたひとつひとつの筋肉を包み束ねる役割を持つのが筋膜だ。人間の全身を覆い尽くすことから、「ボディスーツ」とも呼ばれる。木村院長はこう語る。
「最近の研究で肩こりや腰痛の原因となる“トリガーポイント(痛みを引き起こす箇所)”は筋膜にあることがわかってきました。特にエコー画像上、筋膜が厚く重なっている部分に高率に存在します」
番組にも出演した首都大学東京健康福祉部・竹井仁教授(理学療法士・医学博士)が解説する。
「筋膜は肩こり対策としてほとんどの医師が見向きもしなかった部位です。彗星のごとく登場して大きな可能性を秘めていることから、整形外科の世界では“医学界のシンデレラ”と呼ばれています」