日米両国など12か国が大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)について、中国が強い警戒感を抱いていることが分かった。
中国の中央銀行である中国人民銀行の研究部門の責任者である馬軍・同行調査室長はTPP成立によって、中国の国内総生産(GDP)の2.2%が減少するとの見通しを明らかにしているおり、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」も「中国と香港が最大の敗者になる」との見方を伝えている。
TPPは世界のGDPの40%近くを占める巨大な自由貿易圏となり、域内人口は世界の10%の8億人で、国際通貨基金(IMF)の見通しでは、2020年の域内GDPは昨年に比べて24%増となり、人口も5%増加する見通しだ。
これだけの巨大な自由貿易圏だけに、TPPについて、高虎城・中国商務相は同紙の取材に対して、「TPPがその他の自由貿易協定とともに、アジア太平洋地域の経済発展に貢献することを希望する」と一応は歓迎の意を表明。しかし、「TPPは中国の押さえ込みが狙いではないと米国が言っている」と強くけん制した。
高氏の本音は後者のようで、高氏は「TPPはメンバー以外の国々の貿易や資金の流れを変えることになり、大きな影響を与えるのではないか」と中国紙「中国証券報」に語っている。
それを裏付けるのが、人民銀の馬室長の影響予測だ。中国の今年のGDP見込みは約70兆元(約1330兆円)なので、その2.2%は約1兆5400億元(約29兆2600億円)と莫大な額になる。
このため、香港のエコノミストは「中国の主要貿易国である米国や日本などが参加しているため、『世界の工場』という中国の役割に大きな影響を与え、その影響は計り知れない。中国経済に左右される香港の経済にも大きな損害を与えることになり、中国と香港は最大の敗者になる可能性がある」と語る。
高商務相は「中国は短期的にTPPと衝突するかもしれない」と述べる一方で、「今後ともTPPの動きをしっかりとウオッチしつつ、TPPのテキストを勉強していきたい」と慎重な言い回しながらも、「中国は将来の加入を排除しない」とTPP参加を示唆する発言を行っている。