日本ではタブー視されてきた「春画」だが、今年は都内で日本初の展示会が開催されるなど、ようやく市民権を得るに至ったかと見る向きもあった。しかし、カラーグラビアページで春画を掲載した『週刊文春』(10月8日号)について、発行元の文藝春秋が、「編集上の配慮を欠いた点があり、読者の皆様の信頼を裏切ることになった」として突如、「編集長の3か月休養」を発表した。
果たして春画は芸術かわいせつか。それを週刊誌に掲載することは是か非か。この問題について議論すべく、アーティストのろくでなし子氏に意見を求めた。
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このニュースを知り、「まんこ」といっただけで裁判官に大騒ぎされた昨年の勾留理由開示裁判(※注)の時のことを思い出しました。
【※注/ろくでなし子氏の発表した女性器をかたどったアート作品に関して、わいせつ電磁的記録送信やわいせつ物公然陳列などの罪で逮捕・起訴され、法廷で勾留理由について裁判官が説明する勾留理由開示公判が開かれた】
この国、どんだけヒマなんでしょうか? こんなことで編集長が休養になるなら、もっと問題にすべき記事などたくさんあるように思うのですが。
わいせつの意味は「いたずらに人の性欲を刺激し興奮せしめるもの」です。が、春画は、実際に永青文庫の春画展などをご覧になればわかる通り、その表現はおおらかで、滑稽で、人間の自虐的な笑いに溢れています。そして女性自身も性をおおらかに楽しんでいる様子が伝わってきます。
性という逃れられない人間の欲望を客観的に笑う装置にした点でも、現代アート的です。そもそも大英博物館が素晴らしい芸術作品だと認めてコレクションしているものを、わいせつってどういうことでしょう?
私がテーマにしている女性器も、その名前すらいってはならないおかしな状況です。人間の性を「下品」という枠に貶める態度の中に女性差別が隠されているのは明らかで、私が受ける海外からの取材では必ずその点を取り上げられるのに、日本のメディアはほとんど問題にしようとしません。
私が逮捕された時も、「あんなに風俗が発展して街中には性的なものがあふれてるセックス大国なのに、こんなことで逮捕する日本って、バカなの?」と、海外では面白おかしく報道されましたよ。今回の騒ぎも、海外メディアからすれば格好の“珍日本”ネタになりそうですね!
※週刊ポスト2015年10月30日号