北海道日本ハムファイターズ時代に、2006年の日本一と3度のリーグ優勝に貢献。主にリードオフマンとして活躍した森本稀哲(ひちょり)外野手(34)は、パフォーマンスでも多くのファンを魅了した。横浜、西武へと移籍後も変わらずファンから愛され、34歳での早すぎる引退を惜しむ声は大きい。だが、本人は「ここが辞めるタイミングだった」と語る。
「今年4月3日のソフトバンク戦です。代打で出た僕はサファテ投手の150キロの直球を完璧にとらえた。センターに抜けた、と思ったヒット性の当たりが、サファテの右膝を直撃し凡打に。挙句、彼に怪我を負わせてしまった。
少ないチャンスを確実に生かしてきたのが僕の野球人生です。その後も体調は良いのに結果が付いてこない。もう次の人生を頑張った方がいいんじゃないの? という“導き”だと感じたのです」(森本、以下「」内同)
森本は「自分の野球人生と運は切り離せない」と考えていた。
チャンスを掴んだのは、2006年3月29日のロッテ戦。当時の日本ハムには新庄剛志、稲葉篤紀、坪井智哉という鉄壁の外野陣が揃っていたが、そこに割って入る形でスタメンに抜擢され、3安打の活躍を見せた。
「今だから言えるんですけど、試合当日に新庄さんが“出ない”って言い出して僕にお鉢が回ってきた。“お前にチャンスをやるためだ”って言っていましたが、対戦相手の渡辺俊介投手のアンダースローが苦手だったようです(笑い)。
新庄さんに“今日はお前の野球人生の中で最も大事な日だ。打てなければ家族が殺されると思え!”とまで言われて臨んだ試合で、3安打。とくに忘れられないのが、最終回のレフトオーバー。これがヒルマン監督に強い印象を与えて、そこからスタメンで使ってもらえるようになった。運命を変えた一打でした」
●森本稀哲(もりもと・ひちょり)/1981年東京都生まれ。1998年、帝京高校からドラフト4位で日本ハムファイターズに入団。横浜を経て西武へ移籍。ベストナイン1回、ゴールデングラブ賞3回。通算成績は3497打数904安打、打率.259、打点267、本塁打33本。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年10月30日号