中国はバカンスのエピソードにも事欠かない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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春節に次ぐ大移動期であり長期休暇となる国慶節の休みが終わった。のべ7万人が移動するともいわれる大型休暇だけに、混雑は深刻である。
今年は渋滞した高速道路の料金所が話題となり、動かなくなった車の横で携帯用コンロを取り出して料理をして食べはじめるものが出現したり、バドミントンを楽しむ者があるなどの光景が映像でも紹介されていた。
そんなトラブルやハプニングが尽きない中国の代移動期の最後に、空港で起きたある珍事が人々の関心をさらっている。
場所は中国南部、広東省広州市の白雲国際空港であった。一人の老人が大きな椅子を機内に持ち込もうとして安全検査場にいた職員たちにとがめられたことから問題は始まったという。
北京の夕刊紙記者が語る。
「最初は椅子が大き過ぎて安全検査上のX線装置を通すことができないと騒ぎになったのです。職員たちが、その老人に『X線を通さなければこの荷物は持ちこむことはできません』と説明すると、老人はにわかに慌てた様子となり、頭を抱え込んでその場に座ってしまった。そして、こういったというのです。
『私は体が良くないのです。だから万が一座ることができなかったら大変なことだ。椅子が持ち込めないなんておかしいじゃないか!』と」
老人がなぜこんな大きな椅子を機内に持ち込もうとしたのか、やっと納得できた安全検査官たちは腹を抱えて大笑いしたという。中国にはまだまだいろんな人がいるということだろう。