全国銀行協会の佐藤康博・会長(みずほFG社長)は10月15日の記者会見で、銀行業界が1998年以降、自粛してきた政治献金について、「企業の社会貢献の一環として、重要性を有している」と再開を示唆した。
経団連が昨年、5年ぶりに会員企業への政治献金の呼び掛けを復活させるなど、財界は政治的な動きを活発化させている。その見返りが「法人税減税」だ。
安倍政権は法人税の実効税率を5年間で約35%から20%台にする方針を打ち出し、昨年末にまず2年間で3.29%の引き下げを決めた。それを受けて財界は献金の蛇口をひねった。
10月13日には、榊原定征・経団連会長らが官邸に安倍首相を訪ね、法人税率の20%台への早急な引き下げを重ねて陳情。その直後に、全銀協会長の“献金再開発言”が出たわけだ。
経団連の会員大企業のなかでも、メガバンクの献金再開は大きな意味を持つ。メガバンクは自民党に対して、選挙のたびに巨額融資を行なってきた。2013年末時点での融資残高(すなわち自民党の借金)はメガ3行で約70億円にのぼる。
かつて自民党はそうした融資を銀行業界からの献金で返済するやり方を取っていた。要するに銀行に「借金を棒引き」させてきたのだ。献金再開はそのスキームの復活を意味する。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が指摘する。
「社会貢献というなら銀行がまずやるべきは預金者への還元ですが、メガバンクの金利はネット銀行の10分の1以下。そんな状況で政治献金を再開し、アベノミクスの果実を得ようとしている」
全銀協のHPでは銀行の役割を〈経済社会の心臓〉と謳っているが、銀行から供給される“血液”は自民党の金庫にまっ先に流れるのである。
※週刊ポスト2015年11月6日号