本誌・週刊ポスト前号で報じた「孫疲れ」特集は大反響を呼んだ。孫との会話や、送迎に疲れるといった声を多数紹介したが、編集部にかかってきた読者からの電話では特に、経済的な負担を訴える声が多かった。
サンケイリビング新聞社の調査(2009年度)によれば、子供を持つ世帯の双方の親が「電車で30分以内」の近居の場合、親世帯の年間平均援助額は44万6875円、双方の親が遠居の場合では年85万7730円にも及ぶ。遠居のほうが金額がかさむのは、次のような事情もあるからだろう。
「息子家族の里帰りの交通費は、もちろんすべてこっち持ち。さらに孫に“遠くまで来てくれてありがとう”といって、その都度お小遣いを渡している」
と自営業の男性(70歳)。しかし息子夫婦は実家には泊まろうとせず、近くの温泉旅館などに泊まり、昼間にちょっと顔を出すだけだ。
「たしかに孫に会えるのは嬉しいが、嫁に温泉の宿泊費まで堂々と要求されると、さすがにカチンとくるよ」(前出・自営業男性)
祖父母の金銭的な負担は大きいが、子供世帯には「多額の援助を受けている」という自覚はほとんどないようだ。家族問題評論家で『団塊世代の孫育てのススメ』(中央法規出版)の著者、宮本まき子氏がいう。
「平均援助額のデータを見せると、子供世帯のほとんどは『そんなに貰ってない』と驚きます。でも、携帯電話料、出産・育児関連の費用、幼稚園や塾の費用、旅行費用、週末やイベントの飲食費などなど、目に見えていない出費を親の銀行口座から引き落としているケースは多いんです」
子供世帯は、無意識のうちに「孫のためのお金は全部祖父母が出すもの」とでも思っているのだろうか。
「うちの会社の給料日は毎月10日だが、娘一家が遊びに来るのは決まって給料日の直後。家内は“旦那さんもまだ若くてお給料が安いから大変なのよ”と甘い顔をしているが、孫のための品物とはいえ、娘が通販で買った代引き商品の送り先がウチ、というのはどうかと思う」(会社員58歳)
それでも、孫のためのお金となると「自分で払え」といえないのがシニアの辛いところである。
※週刊ポスト2015年11月6日号