リベラルな論調で知られる中国紙「南方都市報」のベテラン記者が国家機密詐取罪の容疑で逮捕され、中国内陸部の江西省の刑務所で取り調べを受けていることが分かった。この記者は偽の気功師の行状について長年取材しており、この偽気功師が警察に圧力をかけて、記者を逮捕させたとの見方も出ている。
ネット上では、「偽の気功師の取材で、国家機密を詐取するなんてありえない。そもそも何が国家機密かどうか、当局は明らかにすべきだ」などとの声が高まっている。
この記者は同紙の劉偉氏で、江西省で気功師と称して「私の特別な気功術で、病気を治してやる」として、多くの市民から金をだまし取ったとされる王林氏を告発する記事を発表。
同紙は2013年、王氏に関する記事について、同年の最高の調査報道およびスクープ記事として表彰した。劉氏はこれを受けて、「長年の苦労が実った。いま、記者を辞めてもよいくらい、非常にうれしい」とのコメントを発表していた。
しかし、今年9月中旬、王氏の犯罪を告発していた王氏の妻とその秘書が江西省で「国家機密詐取罪」容疑で逮捕されたことから、劉氏が同省で取材をしている際、劉氏も同罪容疑で逮捕されてしまったという。
警察当局は王氏らがどのような国家機密を盗んだのか明らかにしてない。
警察が王氏らを逮捕したのは不当として、2004年にやはり国家機密詐取の罪で懲役3年の刑に処せられたニューヨークタイムズ北京支局の趙岩記者がコメントを発表。趙氏は「中国の国家機密は漠然としている。特に、今回の偽気功師の王林のことが国家機密であるはずはない」と主張している。
趙岩氏は2004年、当時の江沢民・元国家主席が中央軍事委主席を辞任するとのスクープを報じたことで、国家機密詐取罪で逮捕されている。
国家機密詐取罪といえば、今年の5月から6月にかけて、日本人が同容疑で4人も逮捕されているほか、アメリカ人が1人、カナダ人夫婦の2人も逮捕されているが、具体的な容疑について、中国政府は明らかにしていない。
ネット上でも「中国では、都合の悪い人間を犯罪におとすための理由として、国家機密詐取罪はよく使われる。当局はどのようなものが国家機密なのか明らかにすべきだ」との声が出ている。