往年のレジェンド選手たちが球界の問題をズバリと突く短期連載。今回は400勝投手・金田正一氏が、日本プロ野球の在り方に物申す。
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先日テレビを見ていて絶句したよ。もう11月だというのに選手たちは日本代表・侍ジャパンで「プレミア12」とかいう国際大会に出るという。こんなものはワシにいわせれば害悪でしかありません。今の球界は何か勘違いをしているんじゃないのか。
本来、日本シリーズが終わったこの季節は、選手は体を休める時期なんです。選手の本業は春からのペナントレースで死力を尽くすこと。そこで良い成績を残し、カネを稼ぐのがビジネスなんだ。そのために秋から冬にかけてしっかり休み、力を蓄えて、春・夏に爆発させる必要があるんです。
日本には四季がある。樹木は春に花が咲き、夏の日差しで新緑となる。秋には紅葉して、冬はじっと寒さに耐えて次なる春に備える。この意味をよく考えなさい。生き物は休むべきときに休まないと、必ず体にしわ寄せがくるんだ。体を休めることも仕事なんです。
シーズンで使った体を元に戻すには3か月はかかる。ワシも疲れ切った体を回復させるのに大変気を遣ったよ。だから秋季キャンプなどは、ワシの野球哲学からすれば邪道だった。
同じ気温20度でも春と秋とではかく汗の質が違う。春は体をいじめてもいいが、秋には散歩やゴルフで体を動かしながら、温泉やマッサージで体を癒したものだ。このワシでもそうしないと次のシーズンに野球ができなかった。それが今の選手は秋になってもまだプレーするという。スーパーマンか何かかね。
それに選手は球団の大事な「商品」なんです。万が一、選手生命を左右するようなケガをしたら誰が責任を取るんだ。選手も選手だ。ホイホイ尻尾を振って招集に応じるのはおかしい。大谷翔平(日本ハム)が「すごくワクワクしている。優勝できるように頑張りたい」なんて意気込みを見せていてガッカリしたよ。そんなところで頑張るなら、ペナントレース中に頑張ってソフトバンクを倒したらどうだ。
野球の国際試合は、五輪で復活させるだけで十分なんです。それもメジャーの主力が出てきて初めて成立する。それ以外は不要だ。メジャーが参加しない国際大会に日本が一線級のプロを出す必要はない。
そもそもそんな野球の何が面白いんだ。単に主催者がカネ儲けしたいだけという狙いが透けて見えるから気に入らない。そんな代表チームなど常設する必要はありません。今すぐ解散してしまいなさい。
【プロフィール】金田正一(かねだ・まさいち):1933年、愛知県生まれ。国鉄、巨人で活躍。日本球界唯一の400勝、通算最多奪三振のほか数々の記録を持つ。
※週刊ポスト2015年11月20日号